経費精算は企業経営において避けられない重要な業務です。しかし、従来の手作業による経費精算は時間がかかり非効率的です。また、ミスが発生しやすいことから経費管理に課題があります。
そこで注目されているのが、法人カードの活用と経費精算の自動化です。キャッシュレス決済が普及する中、法人カード導入企業が増加しています。さらに、AIやクラウド技術を活用した経費精算システムが登場し、自動化による効率化が期待できます。
本記事では、法人カードと経費精算自動化のメリットやポイント、注意点などを解説します。経費精算の課題解決につながる有益な情報を得られるでしょう。
経費精算の現状と課題
従来の経費精算は非常に手間がかかる業務でした。従業員が出張や営業活動で発生した経費の領収書を集め、経理部門でチェックして計上するという手作業が中心でした。この作業には以下の課題がありました。
- 領収書の収集と確認に多大な手間と時間がかかる
- 人的ミスにより費目の計上ミスが発生しがち
- 書類の受け渡しと保管に手間がかかる
- 経費の適切な管理と可視化が困難
こうした非効率な業務プロセスは、企業の生産性を妨げる一因となっていました。経費精算の改善による業務効率化が強く求められていたのです。
法人カード導入が広がる背景
近年、キャッシュレス決済の普及に伴い、法人カードの導入が進んでいます。法人カードとは、従業員個人ではなく企業名義で発行されるクレジットカードです。出張旅費などの経費支払いに利用できます。
法人カードには以下のようなメリットがあります。
- キャッシュレス払いで従業員の利便性が高まる
- 経費の内訳が明確になり適切な管理が可能
- 個人の立て替えがなくなりリスクが軽減
- 企業がカード利用で獲得したポイントを活用できる
加えて、法人カードのデータを経費精算クラウドサービスと連携させることで、高度な自動化と正確な経費管理を実現できるようになってきました。法人カードは経費精算の効率化に寄与する重要な仕組みとなっています。
法人カード導入のメリット
企業が法人カードを導入することで、以下の3つの大きなメリットが得られます。
効率化による時間削減
従来の経費精算では、従業員が出張や営業活動で発生した経費の領収書を自ら収集し、所定の申請書に費目や金額を転記する作業が必要でした。しかし、法人カードの利用実績は経費精算クラウドシステムに自動で取り込まれます。そのため、この手間のかかる作業がほとんど不要になります。
また、経理部門でも申請データの入力作業が大幅に削減されるため、全体として経費精算に係る時間を大幅に短縮することができます。生産性の向上と業務効率化に直結するメリットと言えるでしょう。
キャッシュレス経理の実現
法人カードはキャッシュレス決済なので、従業員が現金を持ち歩く必要がなくなります。これにより現金の管理負担が無くなるだけでなく、現金の紛失リスクも回避できます。完全キャッシュレス経理が実現するため、経理業務が簡素化され大きな効率化が図れます。
経費の透明性向上
法人カードの利用履歴は経費精算システムに自動記録されるため、経費の内訳と金額が明確になります。人的ミスなどによる計上間違いのリスクが大幅に低減されるだけでなく、経費全体の透明性が飛躍的に高まります。これにより適切な経費管理が可能になり、不正経理の防止にもつながります。
法人カードの導入は単に経費精算の効率化にとどまらず、透明性の高い経営の実現にも役立つのです。
経費精算自動化のポイント
経費精算業務の自動化を効果的に進めるには、以下の2点が重要なポイントとなります。
自動化システムの賢明な選定
経費精算の自動化は、専用のクラウドサービスを活用することで実現できます。多くのサービスが提供されていますが、自社のニーズにマッチしたシステムを選ぶ必要があります。主な選定ポイントは次の通りです。
- 法人カードの利用データが自動連携できること
- AIやOCRにより領収書データを自動計上できること
- どこからでもアプリで申請・確認操作ができること
- 経費の申請からチェック、決裁までの一連の流れを実現
- 既存の会計システムやグループウェアと連携が可能
機能面に加え、価格やカスタマイズ性、サポート体制なども総合的に検討しましょう。自社の業務フローにフィットするシステムを選ぶことが肝心です。
法人カードとの完璧な連携
経費精算の自動化を実現するには、法人カードの利用データが確実にシステムに連携される必要があります。ほとんどの主要な経費精算サービスでは、主力の法人カードと連携できるよう対応しています。
しかし、利用する法人カードの連携対応状況は事前に必ず確認しましょう。また、カード利用額とシステム上の金額が完全に一致しているかもチェックが必要です。
万が一連携対応がない、もしくは不具合があれば、経理スタッフによる手作業入力が避けられません。自動化の狙いを大きく損なう恐れがあるためです。
法人カード選びの注意点
法人カードの導入は、経費精算の効率化や適切な経費管理に大きな効果が期待できます。しかし、その前提として自社のニーズにマッチした法人カードを選ぶことが重要になります。選び方を誤ると、本来の目的が達成できなくなる可能性があるためです。主な注意点は以下の2点です。
適切なカードの選択基準
法人カードには様々な種類があり、発行会社やサービス内容、利用可能な加盟店網が異なります。自社に最適なカードを選ぶには、次の基準を意識する必要があります。
- 従業員の出張や営業活動などの利用シーンに合わせた加盟店網の広さ
- ポイントの特典内容と付与率の良さ
- 発行手数料など、年会費の有無と金額
- 経費精算クラウドサービスとの連携対応状況
加えて、利用枠や支払い条件、付帯サービスの内容なども総合的に検討しましょう。社内の利用ニーズや経費ポリシーに合致した最適なカードを選ぶことが肝心です。
税務処理への影響
法人カードの利用代金は、会社の経費として処理されます。そのため、適切な会計処理を行わないと税務上の問題が発生するリスクがあります。具体的には以下の点に留意が必要です。
- 従業員の利用実態が業務上の経費に該当するかチェックする
- 全従業員分の経費を網羅的に集計・管理する仕組みを構築する
- 帳簿や領収書など、経費の証憑資料を適切に整備・保管する
- 立替経費の処理など、仮払費用の会計処理も適正に行う
経理や税務の専門家に相談しながら、税務リスクを未然に回避する対策が重要です。法人カード導入前に、会計処理のルール作りと運用体制を整備することが不可欠といえるでしょう。
導入事例と実践のコツ
導入成功事例の分析
法人カードと経費精算システムを導入し、実際に業務改善に成功している事例があります。ある製造業A社は、経費精算システムを導入する前は以下のような課題がありました。
- 経費精算に1人当たり年間120時間を要していた
- 月次の締め作業に10営業日以上を要していた
- 領収書の保管や検索に手間がかかり、過去の経費を参照しづらかった
システム導入後は、以下のような改善がみられました。
- 経費精算業務時間が70%削減
- 締め作業期間を5営業日以下に短縮
- 過去データを自在に検索・参照できるようになった
導入を成功に導いたポイントは、従業員への周知徹底と業務標準化の実施でした。システム運用で疑問点などがあれば専任部署で解決するなど、全社をあげた取り組みが奏功しました。
運用の改善策と効果
経費精算の自動化は、継続的な見直しと改善が肝心です。既存の運用を分析し、以下のような点から改善を図ることで、更なる業務の効率化につながります。
- 経費申請時の従業員への通知設定
- 承認ルールの明確化と電子化
- 経費精算フローのさらなる自動化
- 経費分析のためのデータ抽出機能向上
- 領収書の電子化と保管期間の設定
このように、自動化のメリットを最大限活用すべく、システムの機能拡張や業務の見直しを継続的に行うことが望ましいでしょう。
おすすめの法人カード
発行日数の早さと提出書類の少ない、比較的審査の通りやすいと考えられるビジネスカードをご紹介します。各クラウド会計サービスとの連携も可能で、新設法人や小・中規模法人、個人事業主の方にもおすすめです。
MIYABI CARD(VISA)
出典元:https://miyabi-gc.jp/visa.html
MIYABI CARD(VISA)は、創業間もない企業代表者や個人事業主でも審査を受けられるビジネスカードです。
ビジネスライフを総合的にサポートする多くの特長があります。
【主な特長】
・決算書の提出不要
・個人事業主も利用可能
・最短3営業日で発行可能
・年会費初年度無料、次年度以降16,500円(税込・経費計上可)
・限度額最大500万円
・ポイント還元率0.5%※ ※ポイント交換商品により変動あり
・後から分割払いへの変更が可能
さらに、税金の支払いでもポイントが貯まり、海外利用時のサポートも充実しています。ビジネスに役立つ特典も満載です。
年会費は初年度無料で、WEBから簡単に申し込みできます。最短3営業日で発行されるので、スピーディな対応が可能。創業間もない企業代表者や個人事業主でも審査を受けられるのが大きな魅力です。経費精算の効率化やポイント獲得などメリットが多数あるので、ビジネスに欠かせない特別な1枚となることでしょう。
※MIYABI CARDは、企業名義ではなく企業代表者や個人事業主の「個人」名義で申込/契約を行うカードです。また、審査は企業与信ではなく個人与信のため、個人のクレジットヒストリーに影響します。
JCB MIYABI CARD
出典元:https://miyabi-gc.jp/jcb.html
JCB MIYABI CARDは、さまざまな経営者をサポートする充実の特長を備えたビジネスカードです。
【主な特長】
・個人事業主も利用可能
・年会費は初年度無料、次年度以降11,000円(税込・経費計上可)
・ポイント還元率1% (200円ごとに2ポイント)
・接待交際費や事業経費、公共料金でもポイント付与
・効率的な資金運用※最長53日間の支払い延長
・ショッピング限度額最大300万円
JCB MIYABI CARDは、初年度年会費無料で高いポイント還元率が魅力的です。ビジネス経費でもポイントが貯まり、豊富な特典でビジネスライフを強力にサポート。キャッシング・分割払いにも対応し、最大300万円の高い限度額設定です。個人事業主も利用可能で、追加カードの発行や利用明細の確認も簡便。ETCカードや従業員カードの追加発行も可能で、ビジネスニーズを幅広くカバーする総合的な法人カードと言えます。
ライフカードビジネスライトプラス
ライフカードビジネスライトプラスは、法人代表者や個人事業主向けに提供されるビジネスカードです。
【主な特徴】
・年会費永年無料(ゴールドカードを除く)
・申込Web完結
・最短3営業日発行
・限度額最大500万円
・追加カードの発行可能(ETCカード1枚、従業員カード3枚)
ライフカードビジネスライトプラスは、年会費が永年無料である点(ゴールドカードを除く)や、申し込みがWebで完結できる点です。また、最短3営業日で発行可能であり、限度額は最大500万円です。これにより、ビジネスにおいて必要な資金調達や経費管理を効率的に行うことができます。
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード
出典:https://www.saisoncard.co.jp/amextop/sbs-pro/
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス・カード(以下、セゾンプラチナビジネスカード)は、国際的ブランド力の高いアメリカン・エキスプレス・カードを比較的手軽に利用することができます。
【主な特長】
・SAISON MILE CLUBに登録で最大1.125%の高還元率のマイルプログラム
・2,000円(税込)ごとに永久不滅ポイントが貯まる
・最短3営業日で発行
・24時間365日対応のコンシェルジュサービス
・最高1億円まで補償の旅行傷害保険
・世界中の1,400ヵ所以上の空港ラウンジを利用できるプライオリティ・パス
セゾンプラチナビジネスカードは、ビジネスオーナーや個人事業主向けに提供される高性能なクレジットカードです。このカードは、ビジネス経費の管理を効率化し、様々な特典やサービスを通じて、ビジネスの成長をサポートします。特にJALのマイル還元率が高く、永久不滅ポイントが貯まる点が大きな魅力です。
マネーフォワード ビジネスカード
出典元:https://biz.moneyforward.com/
マネーフォワード ビジネスカードは、以下の特徴を持つ法人カードです。
- 起業・開業直後でも発行可能
- ポイント還元率1~3%
- 最短即日発送で1週間程度でカード到着
- ポイント1%還元、マネーフォワード関連決済は3%還元
- 月間利用額に応じて最大5万円分のボーナスポイント
- 初期費用・年会費無料(一部条件あり)
- 従業員の経費立替不要で精算作業削減
- マネーフォワードクラウドと連携し、経費精算・給与合算・会計ソフト仕訳を自動化
つまり、発行が容易で高還元率、初期費用無料、従業員の経費処理の自動化など、起業直後の法人にとって利便性が高いサービスとなっています。
GMOあおぞらネット銀行のMastercardプラチナデビットカード
出典:https://gmo-aozora.com/promotion/lp/priv_debit_customer/
GMOあおぞらネット銀行のMastercardプラチナデビットカードは、現代のビジネスシーンに最適化された、利便性と安全性を両立させた革新的なデビットカードです。特に法人や新設法人の経営者にとって、このカードは日々の財務管理を効率的かつ安全に行うための強力なツールです。日々の経営活動の中で直面する多様な支払いニーズに応え、経営の安定と成長をサポートする設計がされています。
GMOあおぞらネット銀行のビジネスデビットカード
出典元:https://gmo-aozora.com/promotion/lp/business-debit/
GMOあおぞらネット銀行のビジネスデビットカードは、特に新設法人や創業期の企業、そして経営者に最適な金融サービスとして設計されています。このカードの最大の特徴は、与信審査が不要であることにあります。これにより、迅速かつ手軽にカードを入手し、ビジネスに必要な資金の流動性を確保することが可能です。利用可能額は、日額最大2億円(Mastercardの場合は1,000万円×20枚)に達し、大規模な取引や緊急の資金ニーズにも柔軟に対応できます。さらに、年会費や維持費が無料である点も、経営コストを抑えたい企業にとって魅力的です。利用者には、利用額の最大1%がキャッシュバックされるなど、経済的なメリットも大きいのが特徴です。
このように、法人カード利用をスタートする際は、デポジットや年会費の負担が軽く、付帯保険なども整った法人カードから検討するのがベストです。
企業の成長に合わせて徐々に利用額を増やし、ステータスの高い法人カードに切り替えていくのも有効な戦略です。決済の利便性やポイント還元、経費精算の省力化などの観点から検討すると、法人カードは事業運営に大きく貢献する可能性があります。
おすすめのクラウド会計サービス
自動化された入力と仕訳処理、スマホアプリによる経理作業の機動性向上、財務状況の可視化と分析など、クラウド会計サービスのメリットは多岐にわたります。中でも代表的なサービスをいくつかご紹介します。サブスクリプション型のクラウドならコストを抑えながら、最新の機能を活用できる点も魅力です。
どの製品を選ぶかは、企業の規模や会計業務の特性、従業員の利用シーンなどによって最適な選択肢が変わってくるでしょう。自社の実情に合わせて、比較検討することをおすすめします。
freee会計(法人向け)
出典元:https://www.freee.co.jp/
弥生会計オンライン
出典元:https://www.yayoi-kk.co.jp/kaikei/
- 銀行口座やクレジットカードの取引データ、レシートの画像データを自動で取り込み、仕訳を自動化できます。
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マネーフォワードクラウド会計
出典元:https://biz.moneyforward.com/
- 3,000以上のサービスと連携し、銀行やクレジットカード、ネットショップの取引データを自動取得できます。
- 会計だけでなく、請求書、経費、勤怠、給与などバックオフィス業務全体のクラウドサービスがセットで利用可能です。
- 取引データから仕訳を自動推奨し、登録した内容からAIが学習して自動仕訳の精度が向上していきます。
まとめ
経費精算は企業経営に欠かせない重要な業務です。従来の手作業による精算には非効率な面がありました。しかし、法人カードの活用と経費精算の自動化で、業務効率の劇的な改善が期待できます。
自動化のポイントは、法人カードと経費精算システムの連携が不可欠です。また、税務処理への影響にも十分留意する必要があります。システム選定から導入、運用改善に至るまで、企業全体で取り組むことが成功のカギとなります。
まずは法人カードの導入を検討し、自動化による経費精算の効率化に着手してみましょう。ちょっとしたアクションから業務改善が始まるはずです。