「店舗の売上がなぜか少しずつ落ちている」「努力をしているのに店舗の売上が安定しない」などと悩んでいませんか。はっきりとした原因がわからないため、対策を立てられず困っている方は多いでしょう。このようなケースで取り組みたいのが店舗の分析です。現在の状況を正確に把握できれば、問題の原因と改善点を見極めやすくなります。
この記事では、店舗の状態を把握できる10個のチェック項目を紹介しています。コスト、運営体制、集客方法、商品・サービスなどを網羅的にチェックできる点が特徴です。以下の項目に6つ以上該当していれば、店舗の経営は安定しやすいといえるでしょう。該当する項目が5つ以下の場合、店舗の改善が必要と考えられます。現在の状況が心配な方は、10個のチェック項目で経営安心度を評価してみてはいかがでしょうか。
1.固定費が適切である
固定費は、売上の多寡にかかわらず、毎月、決まってかかる支出です。適切に管理している店舗は安定した経営を続けやすくなります。代表的な固定費として、以下のものがあげられます。
【固定費の例】
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地代・家賃
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正社員の人件費
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水道光熱費
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減価償却費
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調理器具などのリース料
固定費が高いと、損益分岐点の達成は難しくなるでしょう。固定費の目安は、店舗の業態で異なります。飲食業であれば、地代・家賃は売上の10％以内、人件費は売上の30％以内、水道光熱費は売上の10％以内が目安です。目安よりも高い場合は、削減を試みるとよいでしょう。長期にわたり効果が持続するため、経営状態の改善につながる可能性があります。
2.適切なスタッフの数を確保できている
運営に必要なスタッフを確保できている店舗も、経営は安定しやすくなります。業務を滞りなく行えるからです。例えば、適切なタイミングで接客を行い、売上につなげるなどが可能になります。また、教育にも一定の時間をかけられるため、接客接遇の品質も保ちやすくなるでしょう。
十分なスタッフを確保できていない店舗は、採用活動を積極的に行う必要があります。募集をかけても応募が集まらない場合は、条件面の見直しや求人媒体の変更などを検討しなければなりません。スタッフが多すぎる場合も注意が必要です。給料に加えて、社会保険料や雇用保険料などもかかるため、経営を圧迫してしまう恐れがあります。運営に必要なスタッフを過不足なく確保しておくことが重要です。
3.確実な仕入れルートを確保している
信頼性の高い仕入れ先の確保も、安定した経営には欠かせません。信頼性が低いと欠品や遅配で商品の供給が滞ってしまう恐れがあるからです。商品を確保できないと、店舗の売上が落ちるだけでなくお客様の信頼も失ってしまいます。
同様に、仕入れる商品の品質や価格も重要なポイントです。品質が低い商品は店舗の評判を落とします。高品質な商品を安定供給できたとしても、価格が高すぎると経営を圧迫してしまいます。仕入れ先はこれらのバランスが重要といえるでしょう。
仕入れ先を見直したい場合は、メインの仕入れ先とサブの仕入れ先を用意するとよいかもしれません。一社に依存しないことで、欠品のリスクを軽減できます。また、競合他社が取り引きに関係することで価格交渉も行いやすくなります。
4.競合との差別化できている
競合店と差別化を図れている店舗も経営は安定しやすくなります。選ぶべき理由がはっきりするため、価格競争に巻き込まれにくくなるからです。主体的に価格を決定することで利益率は向上するでしょう。市場で強固なポジションを築ければ新規参入も防ぎやすくなります。
差別化を図るため欠かせないのが、自店舗・他店舗・市場の分析です。自店舗と他店舗の強み・弱み、市場のニーズがわかれば、差別化戦略を立案できます。例えば、自店舗の強みと他店舗の弱みが重なる分野で勝負するなどが考えられます。他店舗が強すぎる場合は、すみわけの検討も必要です。他店舗が強い分野から撤退して、自店舗の強みを発揮できる分野に注力するとよいかもしれません。これらの戦略により、顧客に違いを伝えていくことが重要です。
5.核となる商品・サービスがある
自店舗のコンセプトを強く打ち出した商品・サービスがある店舗も経営は安定しやすくなります。他の店舗では実現できない価値を提供しているからです。コンセプトに共感する顧客から選ばれる店舗になります。顧客がファン化して、リピートしてくれることも考えられるでしょう。
このような商品などは、自店舗の核心的な強みから生まれます。飲食店であれば独自の調理技術があげられます。開発のポイントは、競合店から真似されにくいことです。以上を踏まえて開発を進めると、自社だけの商品やサービスになるでしょう。
6.集客媒体が分散できている
複数の媒体を使って集客している店舗も、安定した経営を行いやすいと考えられます。特定の集客媒体が機能しなくなったとしても大きな影響を受けないからです。
注意したい集客媒体として、ポータルサイトがあげられます。導入が簡単で一定の効果を見込めるため便利ですが、加盟店が多いとポータルサイト内で激しい競争が発生します。集客をポータルサイトに頼っていると、上位プランへの変更や割引クーポンの発行などを検討しなければなりません。店舗の経営を圧迫する恐れがあります。
積極的に活用したい集客媒体として自社メディアがあげられます。ここでいう自社メディアは、Webサイト・SNSなどのことです。自社メディアのメリットは、広告費をかけずに集客できることと発信内容を自由にコントロールできることです。顧客と双方向のコミュニケーションを図れるSNSは店舗と特に相性がよいと考えられています。適切に活用すれば、店舗のファンを獲得できる可能性があります。
7.既存顧客が確保できている
既存顧客の確保も、店舗の安定した経営には欠かせません。ここでいう既存顧客は、常連客やリピーターと考えればよいでしょう。既存顧客が重要になる理由は、新規顧客よりも集客に費用がかかりにくいからです。新規顧客の集客には、広告宣伝費が基本的にかかります。既存顧客は定期的に来店してくれるため、新規顧客ほどの宣伝広告費はかかりません。
繁盛店における既存顧客と新規顧客の割合は「7：3」程度と考えられています。既存顧客の割合がこれよりも低い場合は、新規顧客を常連客化する取り組みが必要かもしれません。主な取り組みとして、再来店に特典を付与する、SNSで情報を発信する（フォローに特典を付与する）、顧客情報を接客・接遇に活かすなどが考えられます。
8.売上と利益を把握している
売上の管理も、店舗の経営を安定させるため必要な取り組みです。現状を正確に把握することで、売上改善あるいは売上アップにつながる対策を立てやすくなります。
売上を管理するポイントは、年間の目標を達成する月間の目標、月間の目標を達成する週間の目標、週間の目標を達成する1日の目標のように、大目標から中目標、小目標を立てて細かく分析していくことです。例えば、週間の売上を管理していれば、月間の売上を追っているだけではわからない売上低下の原因が見えてくるかもしれません。
売上とともに利益を把握しておくことも重要です。利益が少ないと、十分な売上があっても店舗経営は安定しません。利益が少ない場合は、固定費の見直しから進めるとよいでしょう。経営体質の改善を図れる可能性があります。
9.いざという時のために保険に加入している
万が一に備えて保険に加入していると、店舗の経営は安定しやすくなります。何かしらのトラブルが起きたときに、補償を受けられる可能性があるからです。
店舗経営に潜むリスクとして、事故や災害による設備・什器の破損、提供した料理を原因とする食中毒（飲食店）、施術を原因とするお客様のケガ（理容室・美容室など）などが考えられます。これらにより、休業を余儀なくされたり損害賠償責任を負ったりすると経営状態は悪化する恐れがあります。
店舗が加入を検討したい保険は、備えたいリスクで異なります。幅広いリスクに備えたい場合は、店舗総合保険への加入を検討するとよいでしょう。ただし、同じ店舗総合保険であっても補償範囲や補償内容はさまざまです。備えたいリスクを考えたうえで保険商品を選ぶことが重要です。
10.あいさつや掃除など基本的なことができている
あいさつや掃除など、基本的な取り組みができている店舗も、安定した経営を行いやすいと考えられます。顧客を迎え入れる態勢ができているからです。店舗へ足を踏み入れた瞬間からよい印象を与えられるため、売上やリピートにつながりやすくなります。反対に、あいさつや掃除ができていない店舗は顧客を遠ざけてしまいます。このことは、不愛想で不潔な飲食店をイメージすると理解できるでしょう。料理が評判でも入店を躊躇する方が多いはずです。
店舗運営が長くなると、気を付けていても基本的な取り組みが疎かになっていることがあります。この機会に見直してみるとよいかもしれません。あいさつ・服装・髪型・アクセサリー・店内清掃などについてマニュアルを定めておくと一定の品質を保ちやすくなります。
まとめ
「これまで通り」を続けていると、いつの間にか品質が低下してしまうことや時代にそぐわなくなることがあります。経営を安定させるため、定期的な店舗の分析が欠かせません。以上のチェック項目を活用すると、店舗の状態を網羅的に分析できるでしょう。
該当する項目が6項目以上の場合は、今後も安定した経営を続けやすいと考えられます。6項目未満の場合は、何かしらの改善が必要かもしれません。例えば、固定費の割合が高いとわかれば、見直しを進めることで筋肉質な経営体質に改善できる可能性があります。この記事を参考に、店舗の分析を進めて改善点を洗い出してみてはいかがでしょうか。
