企業にとって代表的なコストのひとつであるガス料金。とくに飲食店においては、ガス料金をはじめとする水道光熱費は、コストの大きな部分を占める重要なコストです。一方で、昨今のガス料金の高騰によってコスト削減に取り組みたいけど、どうしていいかわからないという企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ガス料金の高騰の要因やコスト削減に取り組むべき理由、ガス料金削減の具体的な方法などについて、詳しく解説していきます。この記事を参考に、ぜひ自社のガス料金の削減に取り組んでみてください。
近年のガス代急騰の要因
2022年に入ってから、ガス料金や電気料金などの急騰が止まりません。直近にも東京ガス、東邦ガス、大阪ガス、西武ガスの大手ガス4社が、2022年12月分からの料金引き上げを公表しています。
近年のガス代急騰は、
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原料価格の高騰
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円安進行
の2点が主要因といわれています。
ここでは、まずガス代急騰の要因となっている2つのことについて、詳しく見ていきましょう。
原料価格の高騰
1つ目の要因は、原料価格の高騰です。大手ガス会社が扱っているガスは「都市ガス」と「プロパンガス」で、それぞれ原料は、都市ガスが液化天然ガス(LNG)、プロパンガスは液化石油ガス(LPG)が主です。
この2つの原料の調達のほとんどは輸入に頼っており、液化天然ガスの輸入比率は97.8%、液化石油ガスは74.2%となっており、ほとんどを外国に頼っています。
つまり、日本のガス料金は世界的なガス調達価格と密接な関係があるといえます。世界的なガスの需要・供給に目を向けてみると、中国の急激な経済発展に伴うガス需要の増加、ウクライナ紛争などを原因とするロシアのガス供給量の減少などから、天然ガスの価格は上昇し続けています。日本のガス料金もこの価格上昇の影響を受けていることが、ガス料金高騰の主な原因です。
円安進行
2つ目の原因は、急激な円安の進行にあります。先ほども説明したとおり、日本のガス原料の多くは輸入に頼っているため、為替の影響を大きく受けます。ドル円相場を見ると、2021年12月31日のドル円相場は115円/ドル、2022年2月28日現在は136円/ドルと21円も円安が進行しました。たとえば、LNGの2023年1月の価格は20.15$/mmbtuです。
日本円に換算すると、1mmbtuあたりで為替差だけで423円も価格が上昇したことになります。この為替差はそのまま、ガスの輸入価格に転嫁されるため、ガス料金の価格高騰の大きな要因となっています。
ガス代の高止まりはいつまで続くのか
では、ガス代の高止まりは一体いつまで続くのでしょうか。結論からいうと、今後もしばらくはガス代の高騰は続くと見られています。
前述したとおり、ガス代高騰の主な要因は原料価格の上昇と円安進行です。円安についてはやや落ち着いているといえますが、原料価格の高騰は直近の社会情勢からも引き続き高止まりが予測されています。
4大大手ガス会社のひとつである東邦ガスでは、原料価格の高騰分を価格に転嫁できる上限を一部プランで撤廃すると発表しているなど、さらなる値上げの懸念もあります。今後もガス料金の値上げによるコスト圧迫は続く可能性が高いため、早急な対策が必要な状況といえるでしょう。
自店舗・自社が原因でガス代が高くなるケース
これまで述べたとおり、ガス代の高騰に備えできるだけ早く、ガス料金を抑える必要があります。まずは次店舗・自社が原因でガス代が高くなってしまうケースについて、以下の2点から解説します。
ガスの使用量が多い
1つ目の原因は、ガスの使用量が多いことです。ガス料金はガスの使用量に応じて発生するため、使用量が増えればそれだけガス料金の負担も重くなります。とくにガスファンヒーターなどの暖房器具、湯沸かしなどを頻繁に利用する冬には、ガス代がかさむ傾向にあります。
給湯器の故障
2つ目の原因は、給湯器の故障・不調によるものです。ガス式の給湯器はガスでおこした火を利用して水を温める仕組みのため、熱効率が低いとそれだけ水を温めるのに時間がかかり、ガスの使用量も大きくなってしまいます。
ガス設備の利用頻度が例年とそれほど変わらないにもかかわらず、ガス使用量が増えているという場合には、給湯器の故障・不調により、熱効率が悪くなっている可能性があります。一度、ガス設備会社に問題ないか確認してみるといいでしょう。
法人がガス代のコスト削減に取り組むべき理由
法人がガス代のコスト削減に取り組むべきなのは、何よりも自社の利益率アップに有効な手段であるからです。コスト削減と聞くとネガティブなイメージをもつ人もいますが、そのようなことはありません。
自社のコストを最適化し抑制できれば、それらはすべて利益となり、事業投資によるさらなる規模拡大や社員の待遇改善へとつなげられます。コスト削減にはこういったポジティブな影響のあるものであることを、社員全員で共有し進めていくことが重要です。
【法人向け】ガス代のコスト削減方法
では具体的にガス代のコスト削減方法について、以下の5点から詳しく解説します。
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従業員への意識付け
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毎月のガス料金を見える化する
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使用機器の見直し
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よりお得なプランの切り替え
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相見積もり・他社への乗り換え
従業員への意識付け
1つ目の削減方法は、従業員にしっかりと意識付けを行うということです。ガスは毎日使用するものですから、コスト削減に向けては利用する従業員一人ひとりの心がけが最も重要になります。
たとえば、飲食店であれば不要なお湯を出しっぱなしにしない、食器乾燥機はできるだけまとめてから行う、あらかじめ前処理をしてから食器乾燥機を利用するなど、日々の心がけでガス代を削減できるようになります。
事務所などでも、人のいない場所のガスファンヒーターを消すなど工夫次第でガス代を抑えることは可能です。こういった日々の積み重ねがコスト削減では最も重要になるため、従業員の協力は欠かせません。従業員にコスト削減の目的や目標をしっかりと伝え、意識付けするようにしましょう。
毎月のガス料金を見える化する
2つ目の方法は、毎月のガス料金を見える化することです。1つ目の従業員への意識付けとも関連するものですが、毎月どのくらいガスを使用していて、いくらくらいのコストがかかっているかを数値やグラフなどで見える化しましょう。できれば従業員全員が毎日目にするところに貼り出しておくのがオススメです。
こうすることで、現状の無駄を把握することもできますし、削減のために行った工夫が数字となって目に見えるので、従業員のモチベーションアップにもつながります。努力の成果が見えれば、さらに工夫したいという意欲にもつながる好循環が生まれます。従業員への意識付けと合わせて行うことで、絶大な効果を発揮する可能性があるので、ぜひ試してみてください。
使用機器の見直し
3つ目の方法は、使用機器を見直すことです。ガスファンヒーターや給湯器も毎年のように進化しており、ガス使用効率の良いものが増えています。導入時のイニシャルコストは必要となるものの、これらの設備を最新のものに交換するだけでも、ガス代が大きく抑えられる可能性はあるでしょう。
また、飲食店などの場合、熱効率に優れたフライパンや寸胴鍋に変更するなど、調理器具を変えるのもオススメです。熱効率のいい調理器具であれば、それだけ温まる時間も短くなり、ガス代の節約につながります。
よりお得なプランの切り替え
4つ目の方法は、よりお得なプランに切り替えることです。ガス会社では対象機器を設置することで割引となるプランや、電気やインターネットとガスを一緒に契約することで割引されるプランなど、さまざまなお得なプランが用意されています。
自社にあった料金プランを導入するだけでも、大きくガス料金が抑えられることもあるので、ぜひ検討してみましょう。
相見積もり・他社への乗り換え
5つ目の方法は、相見積もりを取り、他社への乗り換えをする方法です。プロパンガスは以前から自由化されており、都市ガスについても2017年4月の自由化以降、決められた会社と契約する必要はなく、自由に契約ガス事業者を選べるようになりました。
自社の業務形態にあった料金プランをもつガス事業者に変更することで、大幅にガス料金を削減することも可能です。自社のガスの使用状況を調査し、複数のガス会社に相見積もりを取り、ガス料金が最も安くなる業者を探しましょう。
ただし、都市ガス・プロパンガスのどちらを使用するかは地域などによって指定されているため、都市ガスからプロパンガス、プロパンガスから都市ガスへの移行はできません。自社が利用しているガスの種類を扱う業者から、自社にあったものを選ぶようにしましょう。
まとめ
中国の需要増や紛争などによる原料高騰、急激な円安進行などを原因としたガス料金の高騰は、企業にとっても悩みの種です。このガス料金の高止まりは今後も継続すると見られており、各企業での対策は急務であるといえます。
仮に高騰が収まるとしても、ガスをはじめとした光熱費などのコスト削減は利益に直結するものであり、これを気に真剣に取り組んでみるのがオススメです。ガス料金の削減には、従業員の意識付け・ガス機器の見直し・ガス契約の見直しが有効です。自社にあったコスト削減を実行できれば、大きくガス代を削減できるかも知れません。この記事を参考に、ぜひガス料金の削減に取り組んでみてください。