FLコストならびにFLコスト比率は、飲食店経営で非常に重要な指標と考えられています。店舗経営を見直すため、理想値を知りたいと考えている方もいるでしょう。FLコスト比率の理想値は60%以下と考えられています。ただし、具体的な内訳は飲食店の業種で異なります。一定の割合を超えると、赤字に転落する可能性が高いため十分な注意が必要です。FLコスト比率が高い場合は、コスト削減を図らなければなりません。
ここでは、FLコストの概要を解説するとともにFLコスト比率の計算方法、業種別の理想値、コスト削減方法などを紹介しています。店舗の経営を見直したい方は確認しておきましょう。
FLコストの計算方法
FLコストの「F」は「Food」、「L」は「Labor」を表します。つまり、FLコストは「食材費」と「人件費」の合計です。これらのコストは、飲食店の主要な経費といえるでしょう。飲食店の売上に対するFLコストの割合をFLコスト比率といいます。FLコスト比率は、飲食店の営業利益と深く関係するため、経営状態の評価などで重要視されます。FLコスト比率の計算方法は次の通りです。
FLコスト比率(%)=(食材費+人件費)÷売上×100
以上の計算で、売上に対する食材費と人件費の割合がわかります。参考に、以下の例でFLコスト比率を計算します。
【店舗A】
- 売上:200万円
- 食材費:60万円
- 人件費:50万円
【店舗AのFLコスト比率】
- (60万円+50万円)÷200万円×100=55%
【店舗B】
- 売上:200万円
- 食材費:100万円
- 人件費:50万円
【店舗BのFLコスト比率】
(100万円+50万円)÷200万円×100=75%
【店舗C】
- 売上:200万円
- 食材費:60万円
- 人件費:60万円
【店舗CのFLコスト比率】
(60万円+60万円)÷200万円×100=60%
店舗A・B・Cの売上は200万円ですが、食材費と人件費が異なるためFLコスト比率も異なります。飲食店におけるFLコスト比率は、どの程度が理想なのでしょうか。
【業態別】飲食店経営におけるFLコストの理想値
一般的に、FLコスト比率の理想値は60%以下といわれています。先ほどの例では、店舗Aと店舗Bが該当します。内訳の目安は、食材費30~35%以下、人件費25~30%以下です。コストコントロールを適切に行えている店舗では、FLコスト比率が55%以下になることもあります。
一方で、FLコスト比率が65%を超える店舗も存在します。先ほどの例では、店舗Bがこれにあてはまるでしょう。FLコスト比率が65%を超えると、店舗の経営は厳しくなると考えられています。赤字に転落する可能性が高いため、FLコスト比率が65%を超える場合はコスト削減を図らなければなりません。
FLコスト比率の理想値は60%以下ですが、食材費・人件費の理想値は飲食店の業種で異なります。主な業種の目安は以下の通りです。
業種 |
食材費 |
人件費 |
ラーメン |
28~35% |
25~32% |
焼き肉 |
38~42% |
18~22% |
居酒屋 |
29~34% |
26~31% |
カフェ |
25~35% |
25~35% |
レストラン |
31~35% |
25~29% |
寿司 |
38~42% |
22~28% |
中華料理 |
30~33% |
27~30% |
食材費の目安は25~42%以下、人件費の目安は18~35%以下です。ただし、これらの値は絶対的なものではありません。FLコスト比率が60%以下になるように、店舗の理想像を見据えてメリハリをつけながらコストをコントロールすることが重要です。
飲食店のFLコストの削減方法
FLコスト比率が高い場合、食材費・人件費の見直しが必要です。ここからは、これらの削減方法を紹介します。
仕入れ先を見直す
食材費を削減するため、仕入れ先の見直しを行います。仕入れ先を変えるだけで、仕入れ単価を抑えられるケースは少なくありません。仕入れ単価を抑えられれば、同じ食材を同じ量だけ仕入れても食材費を削減できます。基本の対策は、複数の卸業者から相見積もりをとることです。それぞれの卸業者に得意分野があるため、食材の価格は基本的に異なります。卸業者の切り替えや食材ごとの使い分けを検討するとよいでしょう。
仕入れにスーパーを使っている場合は、業務用食材店などへの切り替えを検討します。一般家庭を主なターゲットとするスーパーは基本的に割高です。使用量の多い野菜などは、生産者から直接仕入れてもよいでしょう。仕入れ先を変更する場合は、食材の品質に注意が必要です。コストを重視するあまり品質を大きく引き下げると、店舗の評判に悪影響が及ぶ恐れがあります。品質面の確認も欠かせません。
仕入れ先と交渉する
食材費を削減するため、卸業者と取引を重ねてからタイミングを見計らって仕入れ価格の交渉を行います。具体的なタイミングは取引金額などで異なりますが、数カ月程度は取引を続けてからのほうがよいでしょう。一定の取引実績があると、交渉を優位に進めやすくなるからです。
ただし「希望価格が通らないと取引を停止する」などに代表される強引な交渉はおすすめできません。店舗の要望を一方的に押し付けると、今後の取引で譲歩を引き出しにくくなるからです。卸業者もメリットを感じられるように、数量の増加を条件に仕入れ価格の引き下げを相談するなどを心がけましょう。
フードシェアサービスを活用する
食材費は廃棄率を抑えることでも削減できます。廃棄率は仕入れたものから順番に使う、ひとつの食材を複数のメニューに使うなどで抑えられますが、それでもゼロにすることは難しいでしょう。
廃棄率を抑える新たな方法として注目を集めているのが、廃棄予定の食材を抱えている店舗と食材を安く購入したい消費者をマッチングするフードシェアサービスです。例えば、店舗で廃棄予定のパンを販売するサービスなどが登場しています。フードシェアサービスの魅力は、廃棄予定の食材から利益を得られる可能性があることとフードロス対策に取り組む飲食店としてブランディングできることです。地域との新たなつながりが生まれるかもしれません。
スタッフの数を最適化する
人件費の割合が高い場合は、スタッフ数の最適化を図ります。基本的な取り組みはシフトの見直しです。仕込みの時間帯や売上が少ない時間帯に、必要以上のスタッフを配置していないかなどを見直します。
ポイントは、時間帯ごとに見直しを進めることです。スタッフ数を減らす場合は、サービス品質の低下に気をつけなければなりません。必要なスタッフまで削減すると、業務に支障が生じてしまいます。メリハリをつけてスタッフを配置することが重要です。また「今日はお客様が少ないからあがってほしい」などのように、急なスケジュール変更をスタッフにお願いすることはすすめられません。スタッフのモチベーション低下を招く恐れがあります。シフトを組む段階で、スタッフ数の最適化を図りましょう。
ICT技術を導入して人件費を減らす
店舗にICT技術を導入して人件費を減らすこともできます。一例として、テーブルに設置した端末からお客様が注文を入力すると、そのデータがキッチンの端末とレジ端末に反映される仕組みがあげられます。ホール業務、レジ業務を効率化できるため人件費の削減につながる可能性があります。ただし、ICT技術を導入する場合は、イニシャルコストとランニングコストに注意が必要です。具体的な金額はサービスで異なりますが、削減できる人件費でこれらのコストを回収できることを確かめておかなければなりません。
FLコストに家賃を加えた「FLRコスト」も知っておこう
FLコストとよく似た指標としてFLRコストがあげられます。FLRコストの「R」は「Rent」、つまり家賃です。ここでいう家賃は、管理費・共益費などを含みます。家賃も、食材費・人件費とならぶ飲食店の主要なコストといえるでしょう。売上に対するFRLコストの割合をFLRコスト比率といいます。FLRコスト比率の計算方法は次の通りです。
【FLRコスト比率の計算方法】
- FLRコスト比率(%)=(食材費+人件費+家賃)÷売上×100
参考に、店舗DのFLRコスト比率を求めます。
【店舗D】
- 売上:200万円
- 食材費:70万円
- 人件費:50万円
- 家賃:20万円
【店舗DのFLコスト費】
(70万円+50万円+20万円)÷200万円×100=70%
FLRコスト比率の理想値は70%以下とされています。内訳の目安は、食材費30~35%以下、人件費25~30%以下、家賃10%以下です。FLR比率が70%を超えると、利益を残すことは難しくなります。これらのほかにも、水道光熱費、減価償却費、リース料などがかかるからです。土地代を含めてコストの割合を評価したいときは、FLRコスト比率を活用するとよいでしょう。
まとめ
FLコストは、食材費と人件費の合計です。飲食店の営業利益と密接に関わるため、店舗経営で重要視されている指標といえるでしょう。売上に対するFLコストの割合をFLコスト比率といいます。
FLコスト比率の理想値は60%以下です。食材費と人件費の理想値は業種で異なりますが、業界全体では食材費30~35%以下、人件費25~30%以下が目安と考えられています。FLコスト比率が65%を超えると利益を残すことは難しくなります。仕入れ先の見直し、スタッフ数の最適化などでコスト削減を図り、FLコスト比率を60%以下に抑えることが大切です。
FLコストに家賃を加えた指標をFLRコスト、売上に対するFLRコストの割合をFLRコスト比率といいます。FLRコスト比率の理想値は70%以下です。FLコスト比率、FLRコスト比率を参考に、店舗の経営状態を見直してみてはいかがでしょうか。