電力会社の選択ミスは、店舗経営の安定やコスト管理に大きく影響します。 本記事では「新電力 やばい」と言われる理由やリスクの実態を明らかにし、店舗経営者が失敗しないための電力会社の選び方や比較ポイントをわかりやすく詳しく解説します。
なぜ「新電力はやばい」と言われるのか
電気代削減のために「新電力」に切り替える店舗が増えた一方で、「新電力はやばい」「契約して後悔した」という声も少なくありません。では、なぜこのようなイメージが広まっているのでしょうか。その背景を知ることが、信頼できる電力会社を見極める第一歩です。
新電力市場の現状と時系列推移
新電力(PPS:Power Producer and Supplier)は、2016年の電力自由化によって一般家庭や中小事業者向けに参入が可能になった企業を指します。
当初は「電気代が安くなる」「選べる自由が増える」として注目を集め、2020年には700社以上が乱立するほどのブームになりました。
しかし、2021年以降のエネルギー価格高騰や国際的な燃料調達の不安定化によって、多くの新電力が経営難に陥ります。特に2022年は“新電力ショック”とも呼ばれ、数十社が撤退・倒産。経営基盤の弱い企業ほど影響を受け、契約先の顧客が突如として電力供給を失うケースも相次ぎました。
この急激な市場変化が、現在「新電力=やばい」という印象を生んだ大きな要因です。
新電力会社が撤退・倒産する主な原因
新電力が撤退・倒産に追い込まれる最大の理由は、「仕入れ価格の上昇」と「価格転嫁の難しさ」です。
電力の多くは卸市場(JEPX)で調達されますが、燃料価格が急騰すると仕入れコストが高騰し、販売価格を上げられないまま赤字に陥ります。
加えて、価格競争に巻き込まれた企業は「利益率の薄い契約」を大量に抱え、資金繰りが破綻。十分なリスクヘッジを行わないまま事業を拡大したことも、倒産の連鎖を招きました。
つまり、「安さだけで契約を集めた会社ほど危険」なのです。
撤退・倒産時に起こるリスクと店舗経営者への影響
店舗経営者にとって最も深刻なのは、電力会社の撤退による“供給停止リスク”です。
新電力が撤退した場合、一時的に「最終保障供給(大手電力会社が一時的に供給を引き継ぐ制度)」に切り替わります。しかしこの料金は通常より高額で、場合によっては2倍以上の請求が発生します。
また、再契約先を探す間は電気代の見通しが立たず、コスト管理や経営計画に大きな不確実性を生みます。飲食店や小売業のように光熱費比率の高い業種では、月数万円単位でのコスト上昇が経営を圧迫することも少なくありません。
「安くするつもりが、結果的に高くついた」という事例が後を絶たないのです。
消費者が「やばい」と感じる3つの理由
1つ目は「料金の不透明さ」です。
一見安いように見えて、燃料調整費や再エネ賦課金が別途上乗せされ、最終的に大手電力より高くなるケースがあります。料金体系を理解しづらい契約書も多く、「結局いくらなのか分かりにくい」という不満が目立ちます。
2つ目は「サポート対応の悪さ」です。
小規模な会社ではカスタマーサポート体制が整っておらず、トラブル時の対応が遅い・繋がらないといった声も少なくありません。
そして3つ目が「突然の撤退や料金改定」です。
経営不安や市場変動の影響で、契約期間中に急な値上げを行う会社もあり、契約者が不信感を抱く要因となっています。
こうした要素が積み重なり、消費者の間で「新電力はやばい」というイメージが形成されていったのです。
しかし実際には、すべての新電力が危険なわけではなく、信頼性の高い事業者を見極める方法を知ることで、十分にリスクは回避できます。
やばい会社を見抜くための信頼性チェックポイント
「やばい」と言われる新電力が存在する一方で、安定した運営を続ける優良な会社も少なくありません。
違いを生むのは、“企業としての信頼性”を見抜けるかどうかです。
店舗経営者が契約前に最低限チェックしておくべきポイントを整理しておきましょう。
会社の基盤を見る(信用・実績・登録情報)
最初に確認すべきは、その会社がどれほど「基盤のある企業」かという点です。
電力小売事業を行うには、経済産業省への登録が必須ですが、登録済みであってもそれだけで安全とは限りません。
重要なのは、「どのような企業グループに属しているか」「どれくらいの期間、安定して供給を続けているか」という実績面です。
たとえば、大手ガス会社や通信事業者など、他分野に安定収益源を持つ企業は、燃料価格の変動にも比較的強く、撤退リスクが低い傾向にあります。
逆に、事業歴が浅く、資本金が小さい新興企業の場合は、市場変動に対して脆弱です。
また、過去に行政処分や供給停止の報道があった会社は、必ずニュース記事や経産省の公開情報を確認しておきましょう。
「安さ」よりも「信頼できる運営母体かどうか」を最優先に考えることが、リスク回避の第一歩です。
契約内容を見る(解約条件・料金構成・再エネ費)
次に注意すべきは、契約書の中身です。
とくに「基本料金」「従量料金」「燃料費調整額」「再エネ賦課金」の4項目が、総支払額を左右します。
これらがどのように算出されるか、そして変動のタイミングが明示されているかを必ず確認しましょう。
多くの新電力では、「燃料価格高騰時には料金を改定する場合がある」という条項が設けられています。
ここを見落とすと、想定外の値上げに直面し、経営計画が崩れることもあります。
また、解約時に違約金や最低利用期間が設定されているケースもあるため、複数年契約を結ぶ前には必ず条件を確認しましょう。
「途中で乗り換えたくなった時に、どのくらいのコストで解約できるか」まで把握しておくことが、店舗経営における柔軟性を保つ鍵となります。
サポート体制とリスク対応を見る
電力会社を選ぶ上で見落とされがちなのが、「サポート体制の質」です。
電気は止まることが許されないインフラですから、万一のトラブル対応や請求トラブルへのレスポンスが遅ければ、それだけで業務に支障が出ます。
信頼できる会社は、問い合わせ窓口が明確で、営業時間外の緊急時にも対応できる体制を整えています。
また、契約者ポータルなどで使用量の確認・請求の内訳・契約変更が簡単にできる仕組みがあるかも重要です。
さらに、リスク対応力を測る指標として、「市場連動型契約への対応姿勢」も注目に値します。
市場価格変動の影響をそのまま転嫁する仕組みの会社は、リスクが契約者に直結しやすい一方、固定単価制を維持する企業は自社で一定のリスクヘッジを行っている証拠とも言えます。
このように、サポート面と価格設計の両方から企業の姿勢を読み取ることが大切です。
システム・データの安心を見る(スマートメーター・個人情報セキュリティ)
電力会社の信頼性は、料金や契約条件だけでは判断できません。
実は 「顧客情報の扱い方」や「システムの安定性」 が、後々のトラブルを左右します。
特に新電力では、以下のようなリスクが過去に多く発生しました。
- 請求システムの不具合で二重請求・過少請求
- 個人情報が外部に流出
- マイページ障害で料金確認できない
- カスタマー側で使用量データにアクセス不可
新電力のメリット・デメリット
電力の自由化により、家庭や事業者は従来の大手電力会社に縛られず、自分に合った電力会社を選べるようになりました。しかし、新電力にはメリットがある一方で、知っておかないと思わぬトラブルにつながるデメリットも存在します。ここでは、新電力を検討する際に押さえておきたい利点と注意点をわかりやすく整理して紹介します。
メリット
新電力の大きなメリットは、電気料金の節約と契約の柔軟性です。従来の大手電力会社と比べて料金プランが多彩で、夜間や休日に電力を多く使う家庭や事業者は、時間帯別プランや従量制プランを活用して効率的にコストを抑えられます。また、ライフスタイルや事業規模に応じた選択肢が豊富で、再生可能エネルギー由来の電力を選べるプランや、使用量に応じて割引が適用されるプランもあります。さらに、多くの新電力は太陽光や風力などの再生可能エネルギーを積極的に導入しており、環境意識の高い家庭や企業にとって、CO₂削減や持続可能な社会づくりにも貢献可能です。契約や解約の条件も柔軟で、引越しや業務拡大などライフスタイルの変化にも対応しやすい点も魅力です。
デメリット
新電力にはいくつか注意すべき点があります。まず、多くの新電力は自社で発電設備を持たないため、停電時の対応は従来の大手電力会社に依存することになり、災害時に復旧が遅れる可能性があります。また、料金プランが多様である反面、最適なプランを選ぶのが難しく、契約後に思ったほど節約できない場合もあります。さらに、企業規模が小さい場合はサポート体制が十分でないことや、供給の安定性が大手に比べて不安定なこともあります。そのため、新電力を選ぶ際は、信頼性や口コミ、サポート内容を事前に確認することが重要です。
大手電力会社から新電力会社へ乗り換える方法
「新電力に切り替えたいけど、どうすればいいのか分からない」
——そんな声を多くの店舗経営者から聞きます。
しかし、実際の手続きは想像以上にシンプルです。
スマートメーターの普及やオンライン手続きの拡大によって、最短10分で申し込みが完了するケースもあります。
ここでは、店舗経営者が大手電力から新電力へ安全・確実に切り替えるための手順と注意点を、順を追って解説します。
ステップ①:現在の契約内容を確認する
最初に行うべきは、現在契約している電力会社の情報を正確に把握することです。
確認すべきポイントは以下の通りです。
- 契約している電力会社名とプラン名
- 契約電力(kW)または契約容量(A)
- 使用量と料金(直近12か月分が望ましい)
- 契約期間と解約条件(違約金の有無)
これらの情報は「検針票(電気ご使用量のお知らせ)」またはオンラインマイページから確認できます。
このデータが、後の見積もり比較の“基準”になります。
特に注意したいのが解約金の有無です。
一部の大手電力プラン(特に法人契約)では、期間内に解約すると数万円単位の違約金が発生する場合があります。
そのため、契約更新月や自動更新のタイミングも必ず確認しておきましょう。
ステップ②:複数の新電力会社から見積もりを取る
次に、3社以上の新電力会社から見積もりを取得します。
見積もりは、各社の公式サイトまたは法人向け比較サイト(例:エネチェンジBiz、タイナビBIZなど)を利用するとスムーズです。
このとき、以下の条件を同一にして比較することが重要です。
- 契約容量(AまたはkW)
- 使用量(1か月または年間)
- 契約拠点(地域)
見積もり結果を比較する際は、単純な「基本料金+従量料金」だけでなく、
再エネ賦課金や燃料費調整額を含めた総額を確認するようにしましょう。
また、メールや電話対応時の印象もチェックポイントです。
レスポンスの速さや説明の分かりやすさは、その会社のサポート品質を測る指標になります。
ステップ③:契約前に必ず「5項目」を確認する
契約書やプラン説明を受け取ったら、次の5項目を重点的に確認してください。
- 供給実績:どのくらいの期間、どの規模の法人に供給しているか
- 料金体系:固定単価制か、市場連動型か
- 解約条件:途中解約時の違約金・最低利用期間の有無
- サポート体制:問い合わせ対応時間・緊急時連絡先の有無
- 契約書・約款の明確さ:料金改定や燃料調整の条件が明記されているか
特に「市場連動型プラン」を契約する場合は、価格変動のリスク説明を受けたうえで納得できるかを確認することが大切です。
「安い月もあれば高い月もある」構造を理解しておくことで、想定外の請求を防げます。
ステップ④:契約申し込みと切り替え手続き
契約内容に納得したら、新電力会社の申し込みフォームから契約を進めます。
このとき必要な情報は主に以下の通りです。
- 契約者情報(法人名・住所・担当者名)
- 供給地点特定番号(22桁の数字。検針票に記載)
- 現在の電力会社名
- 支払い方法(口座振替またはクレジットカード)
申し込み完了後は、新電力会社が自動的に旧契約の解約手続きを行います。
原則として、利用者が大手電力に直接連絡する必要はありません。
また、スマートメーターが未設置の場合は、地域の電力会社が無料で交換を行います。
立ち合い不要のケースが多く、手続きにかかる負担は最小限です。
ステップ⑤:切り替え完了と請求確認
申し込みから2〜4週間後、切り替えが完了します。
切り替え当日でも停電は発生せず、営業への影響もありません。
供給開始後の最初の請求書で、単価・期間・使用量が契約内容と一致しているかを必ず確認しましょう。
もし不明点があれば、すぐに新電力会社のサポート窓口に問い合わせることでトラブルを防げます。
スムーズな乗り換えのコツ
- 切り替えは閑散期(春・秋)に行うと比較がしやすい
- 使用量データをExcelなどでまとめておくと見積もりが早い
- 店舗移転やリニューアルのタイミングで同時に見直すと効率的
また、切り替え後も半年〜1年おきに契約条件を見直すことで、常に最適な料金とサービスを維持できます。
電力市場は変化が早いため、「契約したら終わり」ではなく、定期的な再チェックがコスト管理の鍵となります。
電力会社選びに関するQ&A
新電力の話題を調べると、「やばい」「倒産した」「高くなった」など、不安をあおるような情報が目につきます。
しかし、その多くは背景を正しく理解すれば、過度に心配する必要がないケースがほとんどです。
ここでは、店舗経営者から特によく寄せられる質問をもとに、誤解をひとつずつ整理していきましょう。
- 新電力が倒産したら、電気は止まるの?
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いいえ、電気は止まりません。
新電力会社が撤退・倒産しても、契約者の電気供給が途切れることはありません。
その理由は、電力の安定供給を守るために「最終保障供給制度」という仕組みがあるからです。もし契約していた新電力が撤退した場合、自動的に地域の大手電力会社(東京電力、関西電力など)が一時的に供給を引き継ぎます。
その間に新しい契約先を探せば、停電や営業停止のようなトラブルには発展しません。ただし、最終保障供給は一時的な救済措置であり、料金が割高に設定されています。
したがって、撤退の報道があった時点で、早めに別の契約先を検討するのが得策です。 - 新電力は結局「安かろう悪かろう」なのでは?
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一概にはそう言えません。
確かに、一部の小規模新電力では経営基盤が弱く、十分なサポートを提供できないケースもあります。
しかし現在では、大手ガス会社・通信会社・自治体系など、信頼性の高い新電力が多数登場しています。例えば「東京ガスの電気」や「大阪ガスの電気」は、大手電力会社と同等の安定性を持ちながら、契約条件によっては料金を抑えることも可能です。
つまり「新電力=やばい」ではなく、「どの会社を選ぶかで差が出る」というのが正しい理解です。重要なのは、料金の安さだけで判断せず、供給体制・顧客対応・リスク対応力を総合的に比較することです。
- 市場連動型プランは危険なの?
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「市場連動型プラン」は、電力市場(JEPX)の取引価格に応じて電気料金が変動する仕組みです。
2022年のように電力卸価格が高騰した際には、請求額が急増する事例が相次ぎ、「危険」という印象を持たれました。ただし、これは仕組みを理解せずに契約したことが原因であり、プラン自体が悪いわけではありません。
市場連動型は、電力価格が落ち着いている時期にはコストを抑えられるメリットもあります。飲食店や美容室など、昼間に電力使用が集中する業種では、変動リスクを避けるために「固定単価型プラン」の方が向いていることが多いです。
一方で、営業時間が夜型・深夜型の店舗では、市場価格が安くなる時間帯を活用して、コスト最適化できるケースもあります。要は、「危険かどうか」ではなく、「自社の使用パターンに合っているか」を基準に判断することが大切です。
- 解約や切り替えは面倒ではない?
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実は、電力会社の切り替えは非常に簡単です。
スマートメーターが設置されている場合、工事不要で契約の手続きだけで完結します。
申し込みから供給開始までの期間も、平均で2~3週間程度です。また、現在の電力会社への解約連絡も、基本的には新しい電力会社が代行してくれます。
ただし、契約期間中に解約すると「違約金」や「解約手数料」が発生するケースもあるため、事前に契約書で確認しておきましょう。切り替えのタイミングとしておすすめなのは、電気使用量が安定している月(春または秋)です。
繁忙期を避けることで、電力使用量の変動に惑わされず、冷静にコスト比較ができます。 - 「電気料金が安くなる」と営業されたけど、本当に信用していい?
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訪問営業や電話勧誘での「安くなります!」というセールストークには注意が必要です。
なかには、料金の一部だけを強調して誤解を招く説明をする業者も存在します。信頼できる営業担当者を見極めるポイントは次の3つです。
- 提示された見積もりに「再エネ賦課金」「燃料費調整額」が含まれているか
- 契約期間と解約条件が明確に書かれているか
- 料金比較の根拠として、現行契約の検針票を基にしているか
特に、検針票を見ずに「すぐ安くなります」と言う営業は要注意です。
本当に信頼できる会社は、店舗の使用状況を丁寧に確認し、数字で比較したうえで提案してくれます。
まとめ
新電力市場は、変化が速く、情報の真偽が混ざり合う世界です。
しかし、正しい知識と信頼できる情報源を持てば、「やばい」と言われるリスクを恐れる必要はありません。
迷ったときは、情報を集めて、比べて、相談する。
その3つを実行するだけで、あなたの店舗にとって最適な電力会社が見えてきます。
電気は、毎日の営業を支える「血流」のような存在です。
だからこそ、安定して流れ続ける環境を整えることこそが、店舗経営者にとって最も賢い選択なのです。

