美容室・理容室の経営において経費削減は、利益の向上・経営の適正化に寄与する重要なテーマです。とはいっても、経費削減をどのように実現していけばいいのか悩んでいる経営者の方も少なくありません。経費削減がサービス品質の低下につながってしまうことが心配で、なかなか思うように進められないという人も多いでしょう。
そこでこの記事では、美容室・理容室の主な経費の内容や水準、経費削減手法について詳しく解説しています。経費削減は利益に直結するものであり、すぐにでも取り組めるものを多くご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
美容室や理容室の運営には、さまざまなコストが必要です。コストを抑え利益を捻出したいというのは、どの経営者でも一度は考えることですが、一方で簡単に下げることが難しいものでもあります。
コスト削減を考えるうえで大切なのは、それぞれの経費の内容や適正な額を把握することです。そこでここでは、美容室や理容室でかかる主な費用やその目安について解説します。
美容室や理容室で必要となる重要な経費のひとつが、材料費です。シャンプーやトリートメント、カラー剤、パーマ剤などの施術に必要な備品が材料費に該当します。基本的に施術に欠かせないものであり、美容室の経費の中でも売上に対して大きな比率を占める費用で、おおむね売上に対して20%程度にのぼります。美容室・理容室の競争激化やサービスの多様化の影響によって近年高騰する傾向にあり、とくに重要性の高い経費のひとつです。
材料費が高騰する理由は、カラーリングやパーマなど利用者の美容意識が高まっていることや原材料の高品質化や値上げなどがあげられるでしょう。また、ヘッドスパや炭酸シャンプーなどの付加サービスの導入を進めている美容室・理容室が多くなっていることも要因です。
材料費は、利用者の満足度に直接影響する重要な費用のため単純な削減は難しく、品質とコスト削減をバランスよく検討する必要があります。なお、自店舗で販売するための商品などは材料費ではありませんので、明確に分別しておくようにしてください。
人件費は、経営者やスタッフに支払う給料のことで、給料以外にも社会保険料など雇用者が支払う義務を負うもののことです。美容室や理容室では大きなウエイトを占めるコストで、スタッフ1名あたり20~25万円ほどが最低でも必要となり、売上に対する割合も40~50%にものぼります。
近年では、美容師への技術評価や成果報酬など待遇改善につなげる企業も増えているなど、重要度は増しています。サービス業である美容室や理容室にとって、人件費のコントロールは慎重な対応が求められるものです。
コストを抑えたいからと給与を低い水準に設定したり削減したりすれば、モチベーションの低下、新たな人材の採用難など、さまざまな悪影響を及ぼすため注意しましょう。
広告宣伝費は、新規顧客を獲得したり、既存客に新しいサービスを知らせたりするために必要なチラシやポスター、Web広告などにかかる費用のことです。効果的な集客につなげるためにも、美容室にとって必要不可欠な費用といえます。
美容業界の広告費の比率は、他の業界よりもやや高めの傾向にあり、売上に対して10~15%程度。ライバル店が多く、広告宣伝をしないと認知度が向上せず新規顧客につなげにくいことや、リピーターの確保が難しいことが主な理由です。
美容業界は誰が見てもわかる商品ではなく、サービスが商品のため、お客様によさが伝わりにくいことも、高めになる要因となっています。
水道光熱費は、その名のとおり水道や電気の使用料のことです。店内の空調や照明、ドライヤー、シャンプーなど他の業種に比べて水道光熱費は高くなりがちで、平均的な相場は以下のとおりです。
水道代:8,000~10,000円前後
ガス代:10,000~12,000円前後
電気代:30,000円前後
ただし、店舗の広さやシャンプー台の数などによって、費用は前後します。また、夏の暑い時期や冬の寒い時期には空調がフル稼働となるため、電気代は高額になる傾向にあります。
水道光熱費はサービスの質に関わる部分でもあり、営業している限りは多く削減するのは難しいため、毎日の積み重ねが重要です。
使用していない部分の照明を消す、シャンプーの合間は水を止めるなどスタッフ一人ひとりが無駄をなくす意識で取り組める仕組み作りが必要となるでしょう。
せっかく上げた売上を効率的に利益に残すためにも、美容室・理容室の経営に経費削減は欠かせないテーマです。
そこでここでは、美容室・理容室におすすめの経費削減方法として、以下の10個をご紹介します。
材料費の見直し
ポータルサイトの脱却
顧客カルテの電子化
雑誌の電子化
会員カードの電子化
社員雇用のフリーランス化
保険料の見直し
ガス料金の見直し
電気料金の見直し
水道料金の見直し
1つめの経費削減方法は、材料費の見直しです。先ほどもご紹介したとおり、美容室・理容室において原価率は非常に大きな比重を占めており、下がった分はそのまま利益となるので、大きな効果を実感できるでしょう。
ただし材料費は、シャンプーやトリートメント、カラー剤、パーマ剤などの美容室・理容室のサービスに欠かせないものです。
削減にばかり気をとられてしまうと、使いたいときに備品が揃っていなかったり、新たな商品を導入することができなかったりと、サービスの品質に影響が出てしまいます。
材料費を見直す際のコツは、
1か月ごとに使用できる材料費の目安を算出すること
材料費の目安は最低限確保したい利益分よりも少し少なく設定すること
です。
まずは月ごとに売上の予測を立て、目標の原価利率をかけることで月に使える材料費を算出します。この際、目標の原価率は最低限確保したい利益率よりも少し低めに設定するのがポイントです。こうすることで、使用する材料費に余裕が生まれ、新しい商品を試すことも可能になります。
利用できる材料費が決まったら、最低でも週に1、2回は棚卸しを行い必要分のみを発注するようにしましょう。無駄な材料を削減できるので、材料費の削減につながります。
頻繁に棚卸しをすることで、材料が不足するといった自体も防止でき、サービス品質も維持できるので、ぜひ試してみてください。
2つ目の経費削減方法は、ポータルサイトの脱却です。ポータルサイトとは、類似する商品やサービスの情報を掲載し、情報提供と集客に活用できるサイトのことで、美容室・理容室業界では、ホットペッパービューティなどが代表的です。
大手ポータルサイトであれば、1日の訪問者数も多く登録した初日から集客効果が見込め、クーポンなども簡単に発行できることから、利用している美容室・理容室も多いでしょう。
しかし、大手ポータルサイトへの掲載費は決して安くなく、月に数十万円かかるケースも少なくありません。また、集客力はありますが一方でリピート率が低く定着率が悪い傾向にあるともいわれており、コスト効率があまり高くない点もデメリットです。経費削減を目指すのであれば、ポータルサイトから脱却し独自の集客方法を確立が重要となるでしょう。
近年では、SNSでの集客や自社サイトの立ち上げなどにより、コストをそれほどかけなくても高い集客効果を見込めるものもあります。また、Web・アプリ予約システムを導入すれば自社のみで集客が簡潔でき、大幅な広告宣伝費の削減につながるでしょう。
3つ目の経費削減方法は、顧客カルテの電子化です。美容室・理容室では意外と紙を使うタイミングは多く、紙を削減するだけでも大きく経費削減につながります。
とくに効果が大きいのが、顧客カルテです。顧客カルテはお客様一人ひとりに作る必要があるため、集客数が多ければ大きいほど紙の負担コストは大きくなるため、電子化することでコスト削減につながります。
また、カルテを電子化することで必要な情報を素早く簡単に引き出すことができ、顧客サービスの品質向上にもつながるでしょう。紙の保管も必要なくなるので保管スペースを節約でき、事務所スペースの確保や接客スペースの拡大なども可能です。最近では美容室専門の電子カルテシステムなどもあり、カルテだけでなくスタッフや在庫の管理も一元化できるシステムもあるので、導入を検討してみるのもいいでしょう。
4つ目の経費削減方法は、雑誌の電子化です。以前の美容室・理容室といえば、ひとつの施術スペースにつき、5~6冊ほどの雑誌がおいてあるのが当たり前でした。ヘアスタイル本などは1冊あたり1,000円以上することも多く、施術スペースが4席あると毎月の雑誌購入費が数万円ほどになることも。
しかし、最近では雑誌のかわりにタブレットを設置する美容室・理容室も増えています。月額数百円で幅広いジャンルの雑誌が読み放題となるサブスクリプションサービスなどを利用すれば、雑誌の購入費を大きく抑えられるでしょう。また、お客様視点でも自分の好みに合わせて雑誌が選べ、衛生面でも雑誌の消毒や管理が必要なくなるなど、顧客サービスの充実にもつながる点もメリットといえます。
イニシャルコストとして、タブレットの購入費が必要ですが、1台につき1万円ほどで購入できますし、長期的に見れば大幅なコストダウンにつながることは間違いありません。コストダウンにもつながり、顧客満足度の向上にもつながる雑誌の電子化は、ぜひ導入したいコスト削減策のひとつといえます。
5つ目の経費削減方法は、会員カードの電子化です。美容室ではリピート率の向上や顧客の定着率向上のため、会員カードやポイントカードを発行していることが少なくありません。一方で、ポイントカードを作っても、再来店に思うようにつながらず効果が時間できないという美容室が多いのも事実。お客様側から見ても、ポイントカードを持つのが好きではない人や、数多くのポイントカードの管理にうんざりしているというお客様もいます。
こういった美容室におすすめなのが、スマートフォン向けのアプリなどを活用した会員カード・ポイントカードの電子化です。最近では予約管理システムと連動し、予約から来店までを一元管理できるシステムもあります。また、LINE公式アカウントではクーポンやショップカードを作成する機能もあります。
カード機能だけであれば無料で利用できるものもあるので、費用を徹底的に抑えたいのであれば、そういったアプリでも十分です。アプリによっては会員に対してお得なクーポンや情報を発信できる機能を備えたものもあるので、用途にあわせて選ぶといいでしょう。
6つ目の経費削減方法は、社員雇用のフリーランス化を進める方法です。フリーランス化の主なメリットは、税金の削減です。社員雇用の場合は、給与の支払い以外にもさまざまな税金負担が発生します。
雇用した社員に対しては、企業が給料の15%程度の社会保険料を負担する義務があります。また、給与支払いは消費税の対象外となるため、消費税から控除することができず、会社が実質的に負担しなければなりません。このように社員を雇用するということは、給料以外にもさまざま企業が負担を強いられることになるのです。
フリーランス化すれば、雇用契約ではなく業務委託契約となるため、雇用の際に発生する社会保険料の負担も発生しませんし、支払った外注費は消費税計算の対象となります。たとえ、現在支払っている給料よりも高額になったとしても、税金が抑制されることを含めて考えれば、総額では大きなコスト削減につながります。
フリーランス化は社員雇用に比べると、スタッフの就業状況が安定しないというデメリットはありますが、コスト削減には大きな効果があるので、自店舗の状況を踏まえ移行が可能か検討してみましょう。
7つ目の経費削減方法は、保険料を見直すことです。美容室・理容室は店舗を構えているため、必ず火災保険に加入する必要があります。また、美容室・理容室の場合、万が一に備えて損賠責任保険に加入している店舗も多いでしょう。損賠責任保険は、店舗内で万が一事故があった場合に、損害を補償してくれるものです。
「カラー剤やパーマ液が肌に合わず、お客様に肌トラブルが発生した」「カットの際に誤ってお客様にケガをさせた」など、美容室ではさまざまなトラブルが発生します。また、お客様の要望と異なる施術をしたことで、訴訟が起こったというケースもあります。これらの事故があった場合でも、その損害を補償してもらえる損害責任保険は美容室に不可欠なものでしょう。
この損害保険は保険会社によって、サービス内容や保険料はさまざまで保険会社を見直すことで、保証内容をあまり変更せずに保険料を引き下げられる場合があります。また、火災保険や損害責任保険などがすべてセットになった保険商品も存在しており、一本化することで割引が適用されるなど、保険料負担が軽減されることも少なくありません。
場合によっては、30~50%の保険料抑制につながる場合もあるので、ぜひ検討してみてください。
8つめの経費削減方法は、ガス料金の見直しです。美容室ではシャンプーなどお湯を使うケースが非常に多いため、ガス代がかかります。ガス代の削減については、以下の3つの方法を検討してみるといいでしょう。
ガス機器のメンテナンス
シャンプー台の削減
ガス会社の変更
ガス機器については、定期的なメンテナンスを行うと無駄が発生しにくくなり、ガス代の削減につながります。ガスタンクやボンベなどを定期的にメンテナンスするようにしましょう。
また、普段使用するシャンプー台を削減するのも有効です。シャンプー台を削減することで、使用頻度を減らすことができガス代の抑制につながるでしょう。それ以外にも、よりお得なプランに切り替えたり、ガス会社の見直しを検討したりするのもおすすめです。
ガス会社では対象機器を設置することで割引料金が適用されるプランや、電気と合わせて契約することでお得になるプランなど、さまざまなプランが用意されています。また、ガスは自由化が進んでおり、ガス事業者をユーザー側が選べるようになりました。
自店舗の状況に合わせたプランやガス会社を選ぶことで、ガス料金を大きく抑えることも可能なので、複数のガス会社から相見積もりをとって、お得なものを選ぶようにすれば、ガス代の削減につなげられるでしょう。
9つ目の方法は、電気料金の見直しをすることです。美容室・理容室では店内の照明ドライヤーやパーマ機材などさまざまなシーンで電気が必要となるため、電気代がかかるため、削減したいと考える経営者の方も多いはずです。
一方で電気代の削減にばかり注力してしまうと、サービス品質や顧客満足度の低下につながってしまう恐れもあるので、注意して進めなければなりません。
具体的な削減方法としては、以下の2つです。
電力プラン・電力会社の切り替え
効率のいい機器に切り替える
電気料金の契約は契約容量によって、さまざまなプランが用意されており、時間帯によって電気料金が割引になるプランなども多くあります。
また、電力の自由化により、電力会社以外のさまざまな事業者が電力サービスを行うようになったため、より自店舗の使用状況にあった契約が可能となっています。手続きもほとんどがWebだけで完了するので、簡単に切り替えられるので積極的に活用しましょう。
ただし、燃料代の上昇などによってこれまで安かった電力会社以外の事業者の電気料金が高騰している場合もあります。電力会社の切り替えの際には、複数の会社から見積もりをとり、比較したうえで切り替えるようにしましょう。
それ以外に、電力効率のよい機器に変更するのもおすすめです。その中でももっとも効果の大きいのが照明のLED化です。LED電球は従来の白熱電球と比べ、年間の電気代が数千円削減できます。また、耐久性も高く交換回数も少なくて済むのもメリットです。
美容室・理容室では店内を明るく保つために、多くの照明を使用するためすべてLED電球に変えることで、大きなコスト削減につながります。
出典元:https://haluene.co.jp/low-voltage/
「ハルとくでんき」は、さまざまな事業体向けに特化した電力プランを提供するサービスです。このサービスの目玉は、全国どこでも(離島を除く)アクセス可能である点です。これにより、地理的な制限に関係なく、事業所や飲食店など多様なビジネスが利益を得ることができます。また、ハルとくでんきは、顧客の具体的な使用状況に合わせたカスタマイズされた電力プランを提供することで、利用者に最大限の柔軟性とコスト効率を提供しています。
最後の経費削減方法は、水道料金の見直しをすることです。具体的な方法としては、以下の2つの方法があります。
シャワーヘッドを交換する
節水業者へ依頼する
美容室・理容室でもっとも水を使うのはシャワーのため、シャワーヘッドを節水効果のあるものに変更することで、最大50%も水道料金を削減できる可能性があります。節水型のシャワーヘッドを利用することに抵抗のある人もいますが、水流を細かくし肌触りのよいものもあるので、お客様満足度を下げたくないという場合でも安心です。
加えて、残留塩素を取り除くものや軟水に変えられるものもあるので、お客様のニーズに合わせることで顧客満足度の向上につなげることもできるので、一石二鳥でしょう。
また、節水業者へ依頼するのもおすすめの方法です。節水業者によっては、通常の水道業者に比べて15~30%以上削減できる業者もあり、美容室の規模などによって異なりますが、年間で10万円以上の削減につながることもあります。業者によっては数か月無料などのキャンペーンを行っている業者もあるので、どの程度コスト削減かを確認しながら選びましょう。
出典元:http://www.jet-leisure.net/
「次世代節水装置JET」は、水の使用量を大幅に削減し、それに伴い水道料金の節約を実現することを目指して開発された革新的な製品です。この装置は、世界6カ国で特許を獲得した革新的な技術を採用しており、その中心となるのが空気混入型節水アダプターと蛇口用通水アダプターの技術です。この2つの技術の組み合わせにより、従来の節水装置に比べて大幅な水の使用量削減を実現しつつ、使用感を損なうことなく水を供給します。このようにJETは、環境保護と経済性を両立するための理想的な解決策として設計されています。
出典元:https://www.lixil.co.jp/lineup/faucet/s/ecoaquaspa-sp/
エコアクアシャワーSPAとは、LIXILが販売する美容シャワーヘッドです。エコアクアシャワーSPAは、3つの吐水モードを備えた多機能シャワーヘッドで、肌に優しい「シルクミスト」、リズミカルな刺激を与える「パワーマッサージ」、空気をたっぷり含んだ肌当たりの良い「アクアスプレー」の3つの吐水で健やかな美しさを提供します。
美容室・理容室の経営において、コスト削減は利益に直接影響する重要な課題です。集客施策による売上アップなどと異なり、自社の努力次第で大きく利益を伸ばすことができるものでもあるため、積極的に取り組んでいきたいものでもあります。
一方で、過度なコストカットはお客様へのサービス品質にまで影響を与えてしまう可能性もあるため、うまくバランスをとりながら進めていくようにしてください。
今回ご紹介しとおり、経費削減方法にはさまざまなものがあります。コストカットは日々の細かな積み重ねが重要です。今回ご紹介した方法の中から自社にあったコスト削減施策を検討して、ぜひ取り組んでみてください。