個人事業主やフリーランスとして事業を始める際に、税務署へ提出する開業届。税金の優遇を受けられる青色申告ができたり、屋号名義の銀行口座が持てたりとメリットもあるものですが、一方でさまざまな記入項目あり、どう書けばいいのかわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では、開業届を初めて作成する方に向けて、開業届の書き方や必要書類、提出先などについて詳しく解説します。
開業届は、提出後の税金に関わる重要な書類のため、記載する項目の意味をしっかりと理解して記入することが大切です。この記事を参考に開業届に関する理解を深めていただき、スムーズな開業を目指してください。
まずは開業届に記載する必要がある各項目について詳しく解説します。
開業届には、以下のような記載項目があります。
それぞれの記載項目について、詳しく見ていきましょう。
ここでは、開業届を提出する所轄の税務署の名称、税務署長名、提出する日付を記入します。税務署の名称や税務署長名は、国税庁の公式サイトや管轄税務署の公式サイトで確認できます。
提出日付については、特に罰則はないものの、所得税法上「開業日」から1か月以内とされているので注意しましょう。
納税地は、「住所地」「居所地」「事業所等」のいずれかから選択し、納税地の住所を記入しましょう。
住所地・居所地・事業所は、それぞれ以下のような場所を指します。
住所地:実際に住んでいる住民票の場所
居所地:住民票とは異なる一時的に住んでいる場所
事業所:事業所や店舗など事業を行っている場所
ちなみに自宅とは別に事務所や店舗がある場合でも、住所地での届け出が一般的です。
この項目には、納税地と自宅や事業所が異なる場合に記載が必要です。たとえば、納税地を住所地としたが、事業所を別に構えている場合は、事業所の住所を記入します。
逆に納税地を事業所とした場合は、住所地の情報を記入しましょう。住所地と事業所地が同じ場合には、この項目は記載不要です。
氏名はフルネームで記入します。生年月日の記入を忘れるケースが多いので、忘れずに記入してください。
個人番号はマイナンバーカードもしくはマイナンバー通知書に記載されています。
職業欄には決まったルールはなく、客観的に理解できる名称であればどのような表記でも構いません。デザイナーや飲食業など、できるだけ具体的な職業を記載しましょう。
なお、個人事業税は業種ごとに税率が定められています。自分の職業の税率がどうなっているかを確認してから、職業を記載するようにしましょう。業種ごとの税率については、各都道府県の公式サイトなどに掲載されています。
屋号とは、個人事業主における会社の商号のようなものです。屋号を届け出ることで、屋号名義の銀行口座の開設や商標登録などができるようになります。
請求書などにも記載するものですので、届け出る際にはよく考えて決定してください。決められない場合には空欄でも構いません。
届け出の区分は「開業」を選択します。他の欄は空欄のままでOKです。事業を引き継いだ場合のみ、受けた先の氏名と住所を記載します。
所得の種類は、事業にあったものを選択します。不動産による所得、山林による所得ではない場合はすべて事業所得を選びましょう。
開業日は、開業の事実があった日を記載してください。開業年度から青色申告をする場合には、開業日から2か月以内に青色申告承認申請書も合わせて提出が必要です。
開業日から2か月以上経過してしまうと、青色申告の適用は翌年度分からとなってしまうので、忘れず提出しましょう。なお、青色申告承認申請書は、開業届と同時に提出しても大丈夫です。
この欄は新規開業の場合は、記入の必要はありません。
この欄も新規開業の場合は、記入の必要はありません。
開業に伴い、青色申告承認申請書や消費税の課税事業者選択届出書を提出する場合には、該当の欄にチェックします。
職業欄に記入した内容について、より具体的な職種・業務内容を記載しましょう。たとえば、デザイナーであれば「服飾のデザイン」など、飲食業ならイタリアンレストランの経営など、客観的に見て業務内容が理解できる記載にしてください。
家族従業員などの青色事業専従者がいる場合は「専従者」欄に、家族以外の従業員がいる場合は「使用人」欄に人数を記入します。
給与の定め方には、給与の定め方とは、月給や時給など、給与の具体的な支払い方法を意味します。月給・日給・月給+ボーナスなど、給与の支払い方法を記入しましょう。
税額の有無の項目には、源泉徴収を行う場合に「有」を、行わない場合に「無」を選択します。
源泉徴収を行うかどうかは、給与額などをもとに「源泉徴収税額表」をチェックして判断しましょう。支払う給与の額が月額88,000円以上の場合は原則的に源泉徴収を行う必要があるので、「有」にチェックしましょう。
従業員がいない場合は、すべて空欄となります。
源泉徴収税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期です。ただし、給与の支給人員が常時10人未満の場合には、申請することで年2回にまとめて納付することもできます。この申請を提出する場合には「有」にチェックしてください。
提出する時点ですでに従業員がいる場合には、給与支払を開始する年月日を記入します。すでに支払っている場合はその日付、予定の場合は支払いを開始する予定月を記入します。
ただし、源泉所得税の納期の特例を受けたい場合には、支払開始日の前月までに開業届や源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請を提出するようにしましょう。
提出前にすでに給与を支払っている場合、提出前に支払ったものは適用の対象外となり、提出した日の翌月の給料分からの適用となってしまいます。
開業届を提出する際には、開業届以外にも以下の書類を提出する必要があります。
必要書類 |
内容 |
マイナンバーがわかる確認書類 |
マイナンバーカードなど。マイナンバーカードなら本人確認書類も兼ねることができる |
本人確認書類 |
運転免許証、パスポートなど |
印鑑 |
|
事業開始申告書 |
所得税の確定申告をしている場合は不要。 提出書類の名称は自治体によって異なる。 |
青色申告承認申請書 |
青色申告をする場合、提出が必要。事業開始から2か月以内に提出しない場合は翌年度からの適用となる。 |
課税事業者選択届出書 |
消費税の課税事業者となることを選択する場合、提出する |
青色専業者給与に関する届出書 |
家族従業員に支払う給与を、青色申告で経費として計上するための書類 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 |
従業員を雇用する場合に源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請を行う書類 |
所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届け出書 |
棚卸資産の評価方法や減価償却資産の償却方法を自身で決める場合の手続き |
所得税・消費税の納税地の変更に関する届出書 |
開業に伴い構える事業所や店舗を納税地として指定する場合に提出する書類 |
郵送の場合は、マイナンバーの確認や本人であることの確認書類は、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類をコピーしたものを「本人確認書類(写)添付台紙」に貼り付けることで行います。この台紙も国税庁のホームページから入手できるので、ダウンロードして印刷しておきましょう。
また、開業届の控えと返信用封筒を同封しておき、受領印の押された控えを返納してもらいます。封筒には返送先の住所を記載し、切っても貼り付けておきましょう。
開業届の提出先は、所管の税務署です。
提出方法は以下の3つの方法があります。
日中は仕事などで窓口の開いている時間に持ち込むのが難しい場合には、他の方法で提出しましょう。なお、郵送で提出する場合、開業届は個人情報が含まれる重要書類であるため、簡易書留などの方法で送りましょう。
また税務署には、開庁時間以外にも書類を提出することができる「時間外収受箱」が設置されています。休日や夜間でも投函ができるので、税務署が近い場合は利用してもよいでしょう。時間外収受箱に提出する場合も郵送の場合と同様に、返送用封筒を入れておきましょう。
今回の記事では、初めて開業届を提出する方に向けて、開業届の各項目の具体的な書き方や、同時に提出が必要な書類、提出先や方法について詳しく解説しました。
開業届を提出すると、個人事業主として開業したことが認められ、青色申告控除が受けられたり、屋号での口座開設ができたりするなど、さまざまなメリットもあります。
個人事業主として活動していくには、事業スキル以外にも開業届や青色申告のような手続きについても、しっかりと理解しておく必要があります。開業届の内容は今後の税金などに関わるため、各項目の役割をしっかりと理解し、慎重に記載してください。