新規開業・独立は、5年間で約2割が失敗する厳しい世界です。しかし、成功に導くためには、過去の失敗事例に学び適切な対策と事前準備を行うことが重要です。
この記事では新規開業・独立に失敗する原因や成功するために必要な事前準備などについて、詳しく解説しています。新規開業・独立をお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
巷で起業した会社は5年以内に9割以上が失敗するという話を聞いたことがある人もいるかもしれません。しかし、実際の統計データではそれほど高くないという事実が提示されています。
中小企業庁が発表している2017年版小規模企業白書によると、中小企業の5年以内の起業失敗率は18.3%となっています。(5年後の国内起業生存率 81.7%)
出典: 2017年版小規模企業白書
つまり、新規開業や独立が失敗に終わる企業は20%程度です。思ったよりも低いと感じている人も多いかもしれませんが、それでも5社のうち1社は失敗する厳しい世界であることも事実です。せっかくの新規開業・独立を失敗に終わらせないためには、しっかりと準備し対策しておくことが重要となるでしょう。
新規開業・独立の失敗の割合が思ったよりも低いとはいえ、できるだけ失敗は避けたいものです。そこでここでは、新規開業の失敗によるある原因を以下の5点から詳しく解説します。
需要・市場の読み違え
開業メンバーとの関係
資金不足
過剰な自信・思い込み・モチベーション不足
ノウハウ・外部パートナーの不足
1つ目の原因は需要・市場の読み違えによる失敗です。新規事業・独立を成功させるには、まず市場や競合の状況、ニーズの内容、価格などさまざまな要素を慎重に調査し、自社のポジションを定めなければなりません。
これらのマーケティング調査が十分でなく、自身のイメージなどの曖昧なニーズに基づいたずさんな事業計画や見切り発車では、成功はほど遠い状況となるでしょう。
2つ目の原因は、開業メンバーとの関係性の悪化による失敗です。新規開業や独立など起業するケースでは、友人同士などで起業をする場合も少なくありません。プライベートではとくに問題なく友人関係を築けていても、いざ起業となるとお金や地位などさまざまなトラブルの種が発生します。
これらに関するメンバー間でのトラブルがやがて組織全体をギクシャクし、起業そのものをだめにしてしまうことも少なくありません。こういったトラブルは、事業が順調に成長した段階で起こることが多いため、起業した段階で決めておくなどの対策をしておく必要がありそうです。
3つ目の原因は、資金不足による失敗です。新規開業や独立の場合、開業当初から利益がでることはほとんどなく、投資が先行します。また、開業当初は金融機関からの信用力も高くないため、資金調達が思うようにならず、将来性のある事業にも関わらず、撤退を余儀なくされるケースも目立ちます。企業経営では、売掛金と買掛金のサイクル、資金調達などを踏まえたキャッシュコントロールが非常に重要にだといえるでしょう。
4つ目の原因は過剰な自信・思い込み・モチベーション不足による失敗です。新規開業や独立をしようと試みる人は、多くの場合成功に対して強い信念を持っています。強い信念はときに強い武器となりますが、状況によっては過信となり、冷静な判断ができず失敗につながってしまうことも少なくありません。市場に対する思い込みでデータに基づかない意思決定により、失敗に終わるというケースもあります。
また、当事者意識のなさも失敗につながる大きな要因となるでしょう。とくに企業内での新規事業の場合は、会社の指示でやっているというような意識では成功させるのは難しくなります。新規事業立ち上げに向けて、やり遂げられる人材の選定が非常に重要な要素となるでしょう。
5つ目の原因は、ノウハウ・外部パートナーの不足による失敗です。新規開業・独立となると、何から何まで自分がすべて行い、他の人の意見を取り入れないという人は少なくありません。
しかし、多くの起業がそうであるように、企業運営において必要なさまざまな判断や行動をすべて一人で担うことは、現実的ではありません。専門的な知識やノウハウなどを外部の力に頼ることをせず、結果的に費用や時間がかかってしまい、時を逃してしまったり、判断を誤ってしまったりして失敗に終わるケースもよくある事例です。
先程あげた新規開業・独立の失敗事例に共通しているのは、事前の準備や計画が不足していることにあります。ただの思いつきやモチベーションだけで成功するほど、新規開業や独立は簡単なものではありません。
どんな事業をどんな市場に対して行うのか、自社や自分の強みや適性はどこにあるのか、狙っている市場における自社のニーズや競合の状況はどうか、社内の対応体制は整っているかなど、さまざまな準備を周到にしておくことが重要です。
また、調査した結果に基づいた綿密な計画策定も不可欠です。計画なしに新規開業・独立をして、万が一はじめはうまくいったとしても、事業評価のものさしがないために、市場の変化に気づかず対応が遅れたり、急な資金ショートにより失敗したりしてしまうということもあります。
では最後に失敗事例なども踏まえ、新規開業・独立を成功させる事前準備のポイントについて、以下の5点から詳しく解説します。
開業・独立リスク調査
市場ニーズ調査
資金調達
メンバーとの関係構築
外部パートナーの準備
1つ目のポイントは開業・独立リスク調査を行うことです。新規開業・独立をする際には成功のイメージも大切ですが、新規開業・独立のマイナス面やリスクにも目を向けておくことが重要です。
新規開業・独立をすると、さまざまな想定外の事態に直面します。マイナス面やリスクを事前に想定しておくことで、そういった事態に直面した際にも冷静に対応できたり、事前にリスクヘッジの手を打ったりすることができます。新規開業・独立をしようと考えた当初は、成功に対するビジョンを信じて疑わない人もいますが、必ずマイナス面にも目を向けておくようにしましょう。
2つ目のポイントは市場ニーズの調査をしておくことです。自社で扱う商品やサービスがいくら良くても、市場で求められていなければ結局は売上にはつながりません。自社の見込み顧客候補となる市場がどの程度あるか、競合企業があるか、競合企業のマーケットでの強さなど、さまざまな側面から、市場ニーズや状況を確認しておきましょう。
この市場調査をしっかりとし計画を立てておくことで、実際に営業を開始し思うような成果が上がらなかった場合でも、原因の分析などの次の行動にもつながります。開業当初だけでなく、開業後の経営面でも非常に重要な要素となるため、事前にしっかりと行っておくようにしましょう。
3つ目のポイントは資金調達です。新規開業・独立をした当初は、すぐに売上があがるということはあまりありません。一方で家賃や仕入費用などの支払は当然発生するため、売上があがるまでの間、耐え忍ぶだけの資金を準備しておく必要があります。
また、企業は資金が途絶えればいくら売上や利益が上がっていたとしても継続することは難しくなります。金融機関からの借り入れや自己資金の準備など、いざというときに資金調達しておくようにしておくのも、開業準備として重要なポイントといえるでしょう。
4つ目はメンバーとの関係の構築です。失敗の原因でもご説明した通り、利益の配分や待遇、地位などのメンバーとの確執が原因となって経営がうまくいかなくなるというケースは少なくありません。
これらのトラブルはとくに経営が軌道にのったタイミングで表面化することが多いため、開業・独立までの間にしっかりと合意しておくのがオススメです。たとえ、開業当初は同じ志を持ち仲良くしていたとしても、それが永遠に継続するとは限りません。待遇やそれぞれの役割、役職順位などできるだけ細かく取り決めておき、ビジネスパートナーとしても、良好な関係を築けるようにしておきましょう。
5つ目は外部パートナーの準備です。新規事業や独立を成功に導くためには、マーケティングや製品開発、会計などさまざまな専門知識やノウハウが必要です。これらをすべて自分で身につけ実行することが必ずしも正しいわけではありません。時には外部の信頼できるパートナーに専門分野を依頼することも重要です。
専門家は各分野の専門知識やノウハウが豊富で、自社にあった適切な対応に導いてもらえます。また、外部パートナーに依頼することで自分は本業にしっかりとリソースを避けるため、結果的に良い結果に結びつきやすくもなります。
新規開業・独立を成功させるために、最も重要なことは事前準備です。新規開業・独立が失敗する主な要因は、
需要・市場の読み違え
開業メンバーとの関係の悪化
資金不足
過剰な思い込み
ノウハウ・外部パートナーの不足
など、その多くが開業前の準備不足が原因となっています。これらの失敗例に学び、事前準備を周到に行うことで、少なからず新規開業・独立の成功可能性を高められるでしょう。
なかでも、ノウハウや専門知識は自分自身で身につけるには相応の時間が必要です。できるだけ早い段階で、自分の苦手分野をカバーしてくれる信頼できるパートナーを見つけることが重要となるでしょう。