「病院経営にかかるコストを削減したい」「具体的なコスト削減方法を教えてほしい」などと考えている方は多いでしょう。コスト削減は、医療費抑制に対応するため不可欠な取り組みとなりつつあります。取り組みが不十分だと、厳しい経営環境に対応できないことも考えられます。
コスト削減のポイントは、経営陣が中心となり医療の質を落とさないように病院全体で取り組むことです。具体的な取り組みとして、水道料金・電気料金の削減、医療材料の適切な管理などがあげられます。ここでは、病院経営のコストを削減する8つの方法とコスト削減にあたり注意したいポイントを解説しています。
病院経営のコストは総合的に削減していくことが重要です。コストを削減する8つの方法を紹介します。
病院経営で無視できないコストとしてあげられるのが、水道料金です。具体的な金額はケースで異なりますが病院経営を圧迫することもあります。確実性の高いコスト削減方法のひとつが節水器の導入です。節水器は「必要以上の水消費を抑制する器具」「これまでより少ない水消費で機能する器具」といえるでしょう。
代表的な節水器としてあげられるのが節水コマです。コマは、給水栓(蛇口)に設置されている樹脂製またはゴム製の部品を指します。ハンドルの開閉と連動して上下することで水の流量を調整します。通常のコマから節水コマへ変更することにより、ハンドルを開いたときの流量、つまりと吐水量を抑制できます。給水栓に設置するため、従業員の節水意識に関わらず節水を図れる点が魅力です。
節水器には、節水コマ以外にも自動水栓・自閉水栓・節水シャワーなどの選択肢があります。水道料金が気になる場合は、目的に合わせてこれらの節水器を導入するとよいでしょう。
出典元:http://www.jet-leisure.net/
「次世代節水装置JET」は、水の使用量を大幅に削減し、それに伴い水道料金の節約を実現することを目指して開発された革新的な製品です。この装置は、世界6カ国で特許を獲得した革新的な技術を採用しており、その中心となるのが空気混入型節水アダプターと蛇口用通水アダプターの技術です。この2つの技術の組み合わせにより、従来の節水装置に比べて大幅な水の使用量削減を実現しつつ、使用感を損なうことなく水を供給します。このようにJETは、環境保護と経済性を両立するための理想的な解決策として設計されています。
出典元:https://www.lixil.co.jp/lineup/faucet/s/ecoaquaspa-sp/
エコアクアシャワーSPAとは、LIXILが販売する美容シャワーヘッドです。エコアクアシャワーSPAは、3つの吐水モードを備えた多機能シャワーヘッドで、肌に優しい「シルクミスト」、リズミカルな刺激を与える「パワーマッサージ」、空気をたっぷり含んだ肌当たりの良い「アクアスプレー」の3つの吐水で健やかな美しさを提供します。
水道料金を削減するため、敷地内の地下水を新たな水源として活用することもできます。具体的には、敷地から汲み上げた地下水をろ過して飲料水などとして利用します。公共水道が不要になるわけではありませんが(基本的には水源を二次元化する取り組みです)、自前で新たな水源を確保することにより水道料金の削減を期待できます。
水道料金は水道使用量に伴い水道単価が上昇する累進課金制を採用しているため、水道使用量が多い病院にとっては魅力的なコスト削減方法といえるでしょう。
ただし、注意点がないわけではありません。イニシャルコスト・ランニングコストをサービス提供事業者が負担するオンサイト方式の場合、これらを組み込んだ従量料金単価で水を購入することになります。設備を買い取る場合は、イニシャルコストに加えランニングコストもかかります。どのようなコストがどれくらいかかるか確認が必要です。
また、採掘場所により水質が異なる点にも注意しなければなりません。予想とは異なる水質で、期待したほどコストを削減できないこともあります。
水道料金とともに削減を図りたいのが、電気料金です。従来型蛍光灯を使用している場合は、LED照明への交換を検討するとよいでしょう。直管型LED照明へ交換することで消費電力を約50%削減できると考えられています。
あわせて、自然採光を取り入れられる部分は消灯する、無理のない範囲で天井照明を消してスポット照明を利用するなどに取り組むと、さらに消費電力を抑えられるでしょう。ちなみに、経済産業省資源エネルギー庁が発表している資料によると、医療機関の消費電力に占める照明の割合は約33%です(夏季の点灯帯(17時ごろ))。
電気料金は電力会社の切り替えでも削減できる可能性があります。事業者により基本料金や料金プランなどは異なるからです。使用状況に合わせて電力会社を選択すると電気料金の最適化を図れます。切り替えのポイントは供給電圧を確認することです。規模が大きな病院は高圧電力(6,000V)を使用しているケースが多いでしょう。敷地内にキュービクルと呼ばれるボックス型の設備があれば高圧電力を使用しています。この場合は、高圧電力を供給している電力会社へ乗り換えなければなりません。
ちなみに、大手電力会社から新電力会社へ切り替えても、電気の供給が不安定になることや倒産などにより電気の供給がストップすることはありません。契約している新電力が倒産などした場合、大手電力会社が代わって電気を供給してくれます。
出典元:https://haluene.co.jp/high-voltage/
ハルエネの高圧電力サービスは、特に中小規模の工場やオフィスビル向けに設計されています。このサービスは、大規模な電力消費を伴う法人や経営者に最適で、安定した電力供給とコスト削減を同時に実現することを目的としています。電力の品質を維持しつつ、効率的な料金体系を通じて経済的なメリットを提供することが、このサービスの重要な特長です。
出典元:https://haluene.co.jp/low-voltage/
「ハルとくでんき」は、さまざまな事業体向けに特化した電力プランを提供するサービスです。このサービスの目玉は、全国どこでも(離島を除く)アクセス可能である点です。これにより、地理的な制限に関係なく、事業所や飲食店など多様なビジネスが利益を得ることができます。また、ハルとくでんきは、顧客の具体的な使用状況に合わせたカスタマイズされた電力プランを提供することで、利用者に最大限の柔軟性とコスト効率を提供しています。
カルテの電子化も検討したいコスト削減方法です。業務の効率化によりコストを削減できます。例えば、カルテを探す手間を省ける、データ入力をスムーズに行える、文書作成の手間を省けるなどが考えられるでしょう。カルテの保管場所を削減できる点も魅力です。適切に活用すれば、さまざまなコストを削減できます。
ただし、イニシャルコストとランニングコストが基本的にかかります。また、ITに強い人材も必要です。セキュリティリスクを伴う点も見逃せません。環境を整備したうえで検討したいコスト削減方法といえます。
医療材料の在庫を適切に管理することも重要です。在庫を抱えすぎると、使用期限内に使いきれず廃棄するリスクが高まります。また、管理方法が悪いと、モノの所在がわからず重複発注してしまうことも考えられます。医療材料ごとの使用頻度・使用量などを調べて、在庫数をコントロールすることが重要です。
それ以外にも、使用期限・在庫数量などを点検しやすい収納方法の構築も欠かせません。仕入れ価格もチェックしておきたいポイントです。購入頻度、購入数量、他院の購入価格などをもとに交渉を行うと仕入れ価格を抑えやすくなります。
給食委託費やリネン委託費なども病院経営に欠かせないコストといえるでしょう。委託費は、契約更新時にコスト削減を図ることが一般的です。具体的には、委託している業務を洗い出してその必要性を判断します。継続して委託する業務は、業務の仕様や委託単価を評価します。評価のポイントは市場価格を参考にすることです。競合他社の見積もりを参考にすることもできます。競合他社への切り替えも含めて価格交渉を行うとコストを削減しやすくなるでしょう。
病院のコストで最も割合が高いのは人件費です。具体的な割合は病院で異なりますが、全体の50%程度を占めると考えられています。したがって、人件費の削減も重要な取り組みです。ただし、安易な給与の引き下げは控えなければなりません。従業員のモチベーション低下や大量離職を招くことがあるからです。
そこで検討したいのが、パート・アルバイトの割合を増やすことです。この取り組みは、固定費の割合を減らして変動費の割合を増やすと言い換えられます。取り組みを進めることで、売上高にあわせてコストをコントロールしやすくなります。
ホームページの管理費も見直しの対象です。契約時から見直していないと、相場より高い管理費を支払い続けている可能性があります。具体的な管理費はサービス内容などで異なりますが、一般的なホームページであれば1~5万円程度といえるでしょう。
見直しのポイントは、必要な機能・項目を整理したうえで、市場価格をもとに交渉することです。もちろん、他社へ乗り換えることもできますが、この場合は契約期間、ドメインの所有者、著作権の帰属先を確認しなければなりません。また、乗り換えにより移管費用などがかかることが一般的です。乗り換えはメリットがあることを確認したうえで検討しましょう。
病院は地域にとって重要な医療資源です。この点を踏まえて、医療の質を維持・向上させつつコスト削減を図らなければなりません。コスト削減にあたり注意したいポイントは以下の通りです。
コスト削減は、院長などの経営陣を中心に各部門の代表者が参加するプロジェクトチームを立ち上げて取り組みます。実行力を担保するため、経営陣を中心とすることが大切です。コスト削減の目的や目標を明確にすることも欠かせません。
目的はプロジェクトの方向性を決定するため、従業員のモチベーションを高めるため必要です。従業員のモチベーションが低いと、コストを削減することはできません。多くの従業員が納得できる目的を示しましょう。
目標は病院全体と各部署で日々の業務を見直して設定します。ポイントは、削減するコストと定量的な削減目標、目標達成の期限を明らかにすることです。定量的な削減目標を設定することで取り組みを評価しやすくなります。
コスト削減で患者様に悪影響が及ばないようにすることも大切です。例えば、強引な人件費削減で従業員が大量離職すると医療の質は低下してしまいます。このようなトラブルが起きないように一歩ずつコスト削減を進めます。また、従業員に不安を与えないように配慮しなければなりません。この点は、コスト削減の目的と目標を明確に示すことで対処できます。
国が進める医療費抑制に対応するため、病院ではコスト削減が重要な取り組みになっています。水道料金・電気料金も含めて総合的にコストを見直すことが重要です。水道料金は、節水器の導入や地下水の活用で削減できる可能性があります。電気料金は、LED照明への切り替えや電力会社の乗り換えが有効な対策です。もちろん、医療在庫の最適化や委託費の交渉なども必要といえるでしょう。
ただし、コスト削減のために医療の質を犠牲にすることはできません。経営陣が中心となり、従業員・患者様の理解を得つつ病院全体で取り組むことが大切です。日々の業務をもとに、具体的な目標を設定すると成果を出しやすくなります。この記事を参考に、コスト削減を図ってみてはいかがでしょうか。