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病院がDXに取り組むメリット・デメリットと具体的な進め方を解説

作成者: ビズソル編集部|2023.7.31

これまでデジタル化が遅れていた医療業界でも新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにこれまで抱えていた課題が顕在化したことから、DX導入の動きが加速しています。とはいえ、どのように病院にDXを導入すればいいのかお悩みの病院経営者の方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、病院でのDX取組みのメリット・デメリットや、具体的な方法と進め方について、詳しく解説していきます。

病院がDXに取り組むメリット

昨今の病院運営は、人材の不足や医療格差などさまざまな課題を抱えており、課題を解消する手段として、DXの導入に期待が集まっています。

まずは、病院がDXに取り組むメリットについて、以下の4点から見ていきましょう。

  • コスト削減

  • 人材不足の解消

  • 競合との差別化

  • 患者の満足度向上

コスト削減

1つ目のメリットは、コスト削減につながる点です。病院は施設が大きく、入院病棟や外来病棟、高度医療設備のある場所など、稼働時間や使用機器の消費電力などが大きく異なります。

DXにより稼働時間に合わせて空調設備やガスの使用時間などを管理することで、病院でかかるコストを大きく削減できる可能性があります。

また機器ごとの状態管理を一括で行うことで、適切な時期に空調設備のメンテナンスを行え、機器を最適な状態に維持することで結果として、メンテナンス費の削減、電気代の削減にもつながるでしょう。

人材不足の解消

2つ目のメリットは、人材不足の解消につながる点です。たとえば、予約や受付業務を自動化する、病院で管理する薬などの在庫管理をAI化することで、本来の医療業務以外の業務負荷を大幅に軽減することができます。

また、業務負荷が軽減できることで労働環境の改善にもつながるため、人材不足の解消に大きく貢献するでしょう。

競合との差別化

3つ目のメリットは、競合との差別化が図れる点です。病院DXに取り組むことで、蓄積した大量の診療記録や患者情報をデータ化することで、予防診療などの先進的な医療提供ができる可能性があります。

また、オンライン診療が導入することで病院に頻繁に通うことが難しい患者にも適切な医療が提供できるようになります。

このように、高度な医療の提供や患者のニーズに沿ったサービスを提供できることで、競合との差別化が図れる点も、メリットのひとつです。

患者の満足度向上

4つ目のメリットは、患者の満足度向上が図れる点です。たとえばカルテの電子化により患者の情報が各部署で迅速に共有されるため、医療がより適切かつスムーズに受けられるようになります。

また、予約管理システムやオンライン診療が導入されれば、来院時の待ち時間の削減、遠隔地からの受信も可能になるでしょう。

あわせて、待ち時間でのスマホ充電サービスや院内でのWi-Fiサービスなどの実施も、患者の満足度向上につながります。

病院がDXに取り組むデメリット

病院でのDXはさまざまなメリットをもたらしますが、一方でデメリットもあります。

ここでは病院がDXに取り組む上でのデメリットについて、以下の3点から詳しく解説します。

  • 既存システムとの連携

  • セキュリティ対策のコスト

  • 現場のITリテラシー

既存システムとの連携

1つ目のデメリットは、既存システムとの連携が難しいことです。当然ですが、病院にはすでに導入されているシステムや運用があり、大規模な病院であれば、各部署によって最適化されているシステムが導入されているケースも多くなっています。病院のDXでは、これらのシステムを連携させ、デジタルツールとして活用することが不可欠です。

しかし、それぞれの業務に最適化されたシステムを1つのシステムに連携させるのは、それほど簡単ではありません。既存システムと新たに導入するシステムとの連携に障壁がある場合や、対象となる部門からの合意が得られないケースも考えられます。

そのため、DX推進に用いるシステムはできるだけ外部ツールとの連携に優れたものを選定し、現状の使い勝手を大きく変化させないようにすることで、現場の合意を得やすくしておく必要があるでしょう。

セキュリティ対策のコスト

2つ目のデメリットは、セキュリティ対策にコストが必要な点です。病院で扱う情報は、個人情報や診療記録など非常に秘匿性の高い情報が多くなっています。これらをデジタル化する場合、ハッキングなどによる情報漏洩などのセキュリティリスクを防止する対策が必要です。

昨今では、とくに情報漏洩に対する目は厳しくなっており、一度情報漏洩が起こると病院経営を揺るがしかねません。セキュリティ面で万全の対策をとる必要があることから相応のコストがかかる点もデメリットといえるでしょう。

現場のITリテラシー

3つ目のデメリットは、現場のITリテラシーに問題がある点です。どれだけ高度なシステムを入れたとしても、結局使うのは患者様やスタッフです。

近年、医療業界においても電子化が進んでいるとはいえ、まだまだ紙やフィルムなどのアナログな手段での運用が多く残っており、ITツールやデジタル技術の知識・理解の少ない人も少なくありません。高度なツールを導入したのに、結局運用されないようでは本末転倒です。

このような事態を避けるためにも、ITリテラシーの低い人でも問題なく使用できるよう、直感的なUI・UXのシステムを採用するなどの工夫が必要でしょう。

病院DXの具体的な方法

ここまで、病院でのDX導入がもたらすメリット・デメリットについてご紹介しました。では実際に病院で導入できるDXにはどのようなものがあるのでしょうか。

ここでは、病院DXの具体的な方法として以下の3つをご紹介します。

  • 予約管理システム

  • スマートロック

  • オンライン診療

予約管理システム

1つ目は、予約管理システムの導入です。予約管理システムは、来院する患者様がインターネット上から診療時間を予約できるシステムです。予約管理システムで対応できる予約には「順番予約」「時間指定予約」の2つが一般的で、患者様のニーズに合わせて選択するのがポイントです。

予約管理システムの導入により、患者の待ち時間の短縮・スタッフの予約管理・対応業務の軽減、業務効率化につながります。さらに電子カルテと連動できるシステムもあり、診療準備業務の効率化も図れます。

スマートロック

2つ目の方法は、スマートロックの導入です。スマートロックとは、ICカードや電子錠などを用いて入退室を管理するシステムです。

病院はスタッフや入院・外来患者、付き添いの家族や業者など不特定多数の人が多く出入りする施設です。中には、患者の個人情報が保管されているエリアなどセキュリティ対策が必要なエリアも多くあります。

スマートロックを導入することで、これらのセキュリティエリアに入退室できる人を限定し、管理することが可能です。

オンライン診療

3つ目の方法は、オンライン診療の導入です。オンライン診療とは、ビデオ通話や電子メール、チャットなどのアプリを利用して診療をする仕組みです。電子カルテやキャッシュレス決済と連携することで、遠隔地の患者や非対面での診療に対応することができます。

患者のニーズに合わせた医療サービスを提供できることに加え、遠隔地での診療を可能にすることで、地域間の医療格差の是正にも有効です。

病院DXの具体的な進め方

次に病院DXの具体的な進め方について、解説します。

病院DXは、一般的に以下の手順で進めます。

  1. 課題を把握する

  2. DX化対象の優先順位を決める

  3. 導入するシステムを選定する

  4. システムを導入する

  5. システムに合わせ運用を見直す

まずは病院内の課題や患者からのニーズなど、システム導入により解決したい課題を把握しましょう。とくに手作業で行っている定例業務や負荷の高い部門の業務などを重点的に見直すと効果的です。

課題が把握できたら、どの課題を優先的に解消するか、優先順位をつけていきます。優先順位はDX化による効果が大きなものや、導入のしやすさなども考慮してつけるようにしてください。

優先順位が決まったら、優先順位に従って導入するシステムを選定します。システム選定の際には、システム単体だけでなくすでに導入されているシステムとの連携や運用開始までの教育の有無などにも注目しましょう。

また、システムを導入したら運用をシステムに合わせて見直すことが大切です。システムの運用状況を定期的にチェックし、適切なオペレーションに見直していきましょう。

まとめ

今回の記事では、病院がDXに取り組むメリットやデメリット、DXの具体的な方法や進め方について詳しく解説しました。これまでデジタル化が遅れていた医療業界においても、新型コロナウイルスの感染拡大によるさまざまか課題が顕在化し、その解消を目的としたDXへの取り組みが加速してきています。

病院DXがうまく導入できれば、患者への充実した医療サービスの提供やスタッフの負荷軽減などさまざまなメリットにつながります。これを機に、病院でのDX導入を本格的に検討してみてはいかがでしょうか。