Bizsolコラム

管理部門の担当者のための覚書と保管のポイント

作成者: ビズソル編集部|2024.4.23

ビジネスシーンにおいて、適切に合意事項を文書化し、確認することは必須のスキルです。特に管理部門の担当者には、契約書以外にも「覚書」の作成と運用が求められます。

覚書は、話し合いの内容を簡潔に文書化し、相互の合意を確認するための重要な書類です。口約束だけでは曖昧さが残りがちですが、覚書があれば後々の解釈の違いを防げます。

本記事では、管理部門の担当者に向けて、覚書の作成から保管に至るまでの実践的なポイントを解説します。効果的な覚書の運用方法を身に付けることで、業務の効率化と経営の健全性確保に寄与することができるでしょう。

序章: 覚書とは何か? その役割と重要性

企業活動を適切に運営していくためには、さまざまな意思決定や合意形成が必要不可欠です。その際、重要な約束事や取り決めを文書化し、後々のトラブルを未然に防ぐことが求められます。そこで活用されるのが「覚書」です。

覚書とは、話し合いの内容や合意事項を簡潔に文書化したものです。法的拘束力を持つ正式な契約書のようなものではありませんが、相手方との約束や確認事項を明確にし、後に読み返すことで内容を確認できる重要な文書となります。

確かに口頭でも合意は可能ですが、曖昧さが残る恐れがあります。しかし文書化されていれば、後々発生する可能性のある解釈の違いを防げます。つまり、覚書は円滑なビジネス遂行のための、きわめて大切な「証拠」として機能するのです。

企業の管理部門では、さまざまな業務における覚書作成が求められます。新規取引の際の基本合意、既存取引の変更点、会議の概要、社内手続きの変更など、組織運営上の重要事項は適切に文書化されるべきです。

本記事では、管理部門の担当者が効果的に覚書を作成し、適切に保管できるよう、具体的なポイントを解説していきます。覚書がしっかりと機能するよう、その知識とノウハウを身に付けましょう。

覚書の書き方:効力を持つ文書作成のステップ

覚書は簡単な文書ですが、一定のルールに則って作成されなければ、十分に効力を発揮できません。適切に書かれた覚書は、後に重要な証拠として機能するのです。以下、項目ごとに詳しく見ていきましょう。

表題の記載

まず表題には、「覚書」と明記する必要があります。これは、この文書が法的拘束力のある正式な契約ではなく、合意内容を確認するための覚書であることを明確にするためです。

前文の重要性

次に、前文には覚書を作成する背景や目的を簡潔に記載します。例えば「○○業務の効率化に向けて、下記の内容について合意した」など、この覚書がいつ、何のために作成されたかを示します。

本文での具体的な変更点の明示 本文が覚書の核心部分です。ここでは話し合いの結果、新たに取り決められた内容を具体的かつ明確に記述する必要があります。曖昧な表現は避け、できる限り具体的な数値や期限を盛り込みましょう。

後文による合意の証明と保管者の指定

最後に、本文で記載した内容に相互に合意したことを宣言する後文が必要になります。また、この覚書をどちらが保管するのかを明記し、両者の代表者の捺印や署名を受けます。これらにより、合意事項が正式なものとなるのです。

作成日、署名、捺印の重要性 覚書の末尾には、作成年月日を記入するスペースを設けます。そして、前述のとおり、代表者や決裁者の署名および捺印が必須です。日付と署名があることで、いつ、誰が承認したかが明確になり、証拠能力が高まるためです。

このように一定のルールを踏まえて作成することで、覚書はより強力な文書になります。話し合いの内容がはっきりと文書化され、相手方との齟齬を防げるだけでなく、必要に応じて法的な対応も可能になるのです。

覚書の修正方法:変更時の対応

ビジネスを行う上で、状況の変化に対応して、覚書の内容を修正する必要が生じることもあります。例えば、工期が延長になった場合や、注文数量を変更した場合などです。

そのような際、簡単に修正したり追記したりするのは適切ではありません。あくまで覚書は、文書としての一定の体裁を維持すべき重要な書類だからです。

修正する場合は、まず新たに修正覚書を作成しましょう。修正点のみを示すのではなく、変更後の新しい内容を全て改めて記載する必要があります。

前文には「○○年○○月○○日付けの□□覚書の内容を下記の通り変更する」旨を記載し、本文で具体的な変更点を説明します。

その上で、後文で改めて内容に合意した旨を明記し、作成者の署名と捺印をすれば完成です。これにより、従来の覚書に加え、新しい覚書が作成されたことになります。

また、内容に大きな変更があれば、もとの覚書を廃棄し、新しい覚書のみを残すという運用も考えられます。従来の覚書がそのまま残っていると、内容が錯綜して混乱を招く恐れがあるためです。

いずれにしろ、安易に修正を加えず、新たな文書を作成することが重要です。契約変更時の過怠は避けるべきであり、明確な証跡を残すことで、後のトラブル防止につながります。

覚書と念書の違い

類似の文書として「念書」がありますが、覚書とはその性質や位置づけが若干異なります。

念書とは、約束を文書化したものです。言わば「誓約書」のような位置づけで、相手方に対して、何らかの行為を約束する旨を明記した書面となります。

一方、覚書は、あくまで両者の合意した内容を確認するための書面です。相互に確認し、後々の紛争を防ぐための「証拠」としての位置づけが強いと言えるでしょう。

つまり念書は、一方的に約束する内容を記したものですが、覚書は双方が話し合った結果を文書化したものだと整理できます。

このように性質が異なるため、使い分ける必要があります。例えば業務の引き継ぎ時に、従来の方法を守ることを約束させるのであれば念書を用います。しかし、新体制に向けた変更点を確認する際は、覚書が適切でしょ

覚書の保管:重要なポイントと管理のコツ

覚書を適切に作成したら、次は保管が重要なポイントになります。

契約書などと同様に、覚書も大切な文書であり、後々トラブルになった際の重要な証拠となります。そのため、しっかりと保管し、必要に応じて確認できるよう適切に管理することが不可欠です。

保管においてポイントになるのは、以下の3点です。

(1)保管場所の明確化

まずは、覚書をどこに保管するかを明確にしておきましょう。例えば総務部門の書庫や、クラウドストレージ上のフォルダなど、探しやすい場所を決めます。

(2)体系的な分類と整理

次に、契約先別や案件別に分類し、体系的に整理しましょう。そうすることで、必要な時に効率よく探し出すことができます。

(3)定期的なチェックと更新

さらに、定期的に保管状況をチェックし、契約の期限切れや変更があれば、適宜更新や書き換えを行います。そうすれば最新の状況が反映された覚書が常に存在することになります。

加えて、セキュリティ対策も重要です。機密文書である覚書を、安全に保管・管理できる体制を整備しましょう。例えば施錠できる書庫に保管したり、アクセス権限を設けるなどの対策が考えられます。

このように、しっかりとした体制の下で覚書を適切に保管・管理することで、経営判断の重要な根拠資料として、その価値を最大化できるのです。

覚書の電子化:メリットと運用方法

ペーパーレス化が進む中、覚書の電子化も有力なオプションです。電子化には大きなメリットがあります。

第一に、物理的な保管スペースを殆ど必要としなくなることです。電子データはクラウドストレージなどに格納でき、場所を取らずに膨大な量を保管できます。

第二に、検索や参照がとても効率的になります。キーワードで瞬時に検索でき、過去の覚書の内容を簡単に確認できるようになります。

第三に、修正や変更の際にも、新規作成の手間が格段に省けます。電子データの上で加筆・修正が可能なため、ペーパーレスで効率的な運用ができます。

ただし、電子化には注意点もあります。電子データは改ざんや紛失の危険性があり、セキュリティ対策が必須です。また、デジタル化に伴う業務フローの変更や、社内ルール見直しも求められます。

実際に電子化を行う場合は、以下の点に留意しましょう。

  • 電子署名やタイムスタンプなどの認証システムの導入
  • アクセス権限の設定と厳格な運用
  • データのバックアップ体制の構築
  • ペーパーレス化に向けた業務フローの見直し
  • 社内への徹底した周知と従業員教育

こうした対策を講じることで、覚書の電子化は、業務の大幅な効率化と、コストダウンにもつながります。ぜひ検討に値する選択肢と言えるでしょう。

覚書の電子保管にも使える:おすすめの電子契約サービス

おすすめの電子押印サービスとして、イースタンプ(GMO)とイースタンプ(Storage)の2つのサービスを紹介させていただきます。


出典:https://e-stamp.jp/

イースタンプ(GMO)

イースタンプ(GMO)は、株式会社ハイホーが提供するクラウドベースの電子契約サービスです。従来の紙の契約書に代わり、ウェブ上で安全に契約の締結から保管までを一括して行えます。

イースタンプ(GMO)の主な特徴

【2タイプの電子署名対応】

認印タイプと実印タイプの2種類の電子署名に対応しています。認印タイプはメール認証によるユーザー認証で手軽に利用可能、一方の実印タイプはより厳格な本人確認と電子証明書の発行が必要で、高い法的有効性を備えています。

【便利な付帯機能の充実】

手書きサイン機能や各種許可証の画像添付機能など、電子契約に不可欠な機能が多数用意されています。過去の契約書のクラウド保管と検索機能も充実しており、業務効率化をサポートします。

【徹底したサポート体制】

導入前の初期設定から運用ルール策定、取引先への説明まで、専任スタッフによる丁寧なサポートが受けられます。

イースタンプ(Storage)

イースタンプ(Storage)は、法的コンプライアンスを厳守しながら、契約プロセスのデジタル化とペーパーレス化を実現する革新的な電子契約サービスです。

イースタンプ(Storage)の主な特徴

【電帳法対応の書類保管】

他社と締結した電子契約データも保存可能です。異なるプラットフォームの契約書を一元管理でき、保管とアクセスが容易になります。

【電子契約機能】

書面契約にも対応しており、1か月に最大5回の送信が可能で柔軟な運用ができます。

【相談窓口の充実】

利用者の疑問や問題に専門スタッフが対応する相談窓口を完備しています。操作方法の説明から最適な活用方法までをサポートします。

【タイムスタンプ機能】

法的要件を満たしたタイムスタンプにより、契約書の改ざん防止と法的信頼性を確保できます。

以上2つのサービスでは、機能面や対応レベルに違いがありますので、組織の規模やニーズに合わせて使い分けることができます。

まとめ:効果的な覚書と保管の実践

本記事では、管理部門の担当者が、覚書を適切に作成し、保管・管理するためのポイントを解説してきました。

覚書は、簡単な文書に見えるかもしれませんが、企業活動において非常に重要な役割を持っています。明確な合意事項を残すことで、後々のトラブルを未然に防げるだけでなく、必要があれば法的な根拠ともなり得るのです。

適切に作成された上で、体系的に保管・管理されている覚書は、経営判断の重要な礎となります。担当者一人ひとりが、覚書作成とその保管の重要性を認識し、確実な実践を心がけることが何より肝心です。

電子化の波にもしっかりと対応しつつ、効率的かつセキュアな環境を整備することで、覚書の価値を最大限に生かすことができるはずです。

単に形式的に文書を作成するのではなく、一つひとつ、丁寧かつ真摯に取り組むことが大切です。そうすることで、業務効率の向上と、経営の健全性確保にも確実にプラスの効果をもたらすことでしょう。

以上が、「管理部門の担当者のための覚書と保管のポイント」に関する解説となります。業務における覚書の果たす役割を十分に認識し、本記事を参考にしながら、着実な実践を重ねていただければと思います。