高齢者や要介護者が利用する介護施設・老人ホームでは、快適で安全な環境の維持が非常に重要です。その一方で、施設の運営コストを考慮すると、光熱費の削減は経営安定化のために不可欠です。光熱費は、施設全体の運営費用の大きな部分を占めることが多く、特に冬季の暖房や夏季の冷房など、季節による消費量の変動が大きいため、経費削減の対策が求められます。
しかし、光熱費を削減する際には、利用者の快適さやスタッフの労働環境を損なわないよう、適切なバランスを見つけることが重要です。例えば、過度な節電は利用者の健康に悪影響を及ぼす可能性があり、またスタッフの業務効率やモチベーションにも影響を与える可能性があります。
この記事では、介護施設・老人ホームにおける光熱費の削減方法とその際の注意点について詳しく解説します。例えば、省エネ型の設備や機器の導入、適切な断熱材の利用、エネルギー管理システムの導入など、効率的な光熱費削減策を紹介します。また、光熱費削減の取り組みが利用者やスタッフに及ぼす影響についても議論し、バランスの取れたアプローチを提案します。
介護施設では日々の施設運営にさまざまな固定費が必要なため、コスト削減を積み重ねていくことが重要です。ここでは、介護施設・老人ホームの光熱費を削減する方法として、以下の7つをご紹介します。
光熱費削減の第一歩は、毎月の光熱費を見える化することです。これにより、従業員全員が光熱費の削減に対する意識を持つことができます。光熱費のデータを従業員の目に触れる場所に掲示することで、消費パターンの把握や削減効果の確認が容易になります。また、消灯や電気機器の使用ルールを明示することで、無駄遣いを減らし、効果的な削減活動へと繋がります。
介護施設では、利用者の快適さを保ちつつ、空調の設定温度を適切に保つことが重要です。エアコンの設定温度は1度変えるだけで消費エネルギーが約10%変わるため、冷房時は28度、暖房時は20度を目安に設定します。施設の室温を確認し、サーキュレーターや扇風機の活用により、空調の効率を高める工夫も有効です。
利用頻度に応じて照明を管理するために、人感センサー付きのライトを導入することが有効です。特に利用頻度の低い場所では、人感センサー機能により、照明の消し忘れや無駄な使用を防ぎ、電気代の節約に繋がります。これにより、エネルギー効率の向上と経費削減が期待できます。
4つ目のコツは、節水シャワーヘッドを導入する方法です。介護施設では多くの人が浴室を利用するため、浴室のシャワーで使用する水の量はかなり多くなります。シャワーを出しっぱなしにしていると、思いの外多くの水を無駄にしているものです。
節水型のシャワーヘッドや手元でオンオフ操作ができるヘッドに取り替えるだけでも、使用量を大幅にカットできます。また、シャワーの水量を削減できれば、お湯を沸かすガス代の節約にもつながるため、一石二鳥です。
5つ目のコツは、LED電球を導入する方法です。発熱電球に比べてLED電球は1か月の消費電力が2割程度ですむので、大きく電気代を節約することが可能です。
またLED電球は寿命が4万時間とされており、白熱電球の寿命が1,000~2,000時間であるのに対してかなり長くなっています。
購入コストは白熱電球よりも高い傾向にありますが、近年では下がりつつありますし、長く買い替えなくてすむため、長期的に見ればコスト削減につながるでしょう。介護施設の場合、一般家庭に比べて照明の数も多いので、その分電気代の削減効果も大きくなります。
6つ目のコツは、よりオトクなプラン・会社に切り替えることです。2016年の電力の小売自由化により、電力会社以外でも多くの企業が電気小売事業に参入しています。
民間会社が運営するいわゆる新電力では、さまざまな料金プランが用意されています。自社の施設にあった最適な電力プランへ見直すことで大きく電気料金を抑えられることもあるので、複数の会社から見積もりを取り電気料金プランを見直してみましょう。
7つ目のコツは、従業員への意識付けをすることです。これまでご紹介したとおり、光熱費を削減する方法はさまざまですが、使用する従業員一人ひとりが節約に対して高い意識を持ち、協力することが不可欠です。
光熱費の見える化や定期的なミーティングでの対策の検討、節約によって得られる効果の共有などを通じ、従業員の意識の向上を図りましょう。また、削減額を張り出し、目標意識を与えるのも効果的です。
次に介護施設・老人ホームの光熱費を削減する際の注意点についても押さえておきましょう。まず注意すべきは、過度な光熱費の削減で、利用者の環境悪化やスタッフへの悪影響が起こらないようにすることです。
介護施設や老人ホームの利用者は視覚機能が低下していたり、体温調節機能が低下していたりする人も多くなっています。空調を過度に抑制することで、脱水症状や熱中症になるリスクは若者に比べて高くなってしまいます。
また、照明を抑えることで、視覚機能が低下している利用者の事故につながったり、スタッフの業務効率が下がったりする可能性もあります。それ以外にも、環境が悪くなったことにより、スタッフが体調を崩してしまえば、必要な人員を確保することができず、施設の運営そのものに支障が出る可能性もあるでしょう。
光熱費の節約によるコスト抑制は施設運営において重要なものですが、利用者やスタッフの環境の悪化につながっては本末転倒です。あくまで利用者やスタッフの体調や業務環境を優先し、適切な対応をしていくことが重要だといえるでしょう。
光熱費などのエネルギー使用量の抑制は社会問題にもなっており、これに取り組む企業や施設に対しては、自治体などから補助金や助成金が出ることも少なくありません。
補助金や助成金をうまく活用することで、節電設備の導入コストを抑え、効率的な施設環境を整えることも可能です。
ここでは、具体的な自治体の補助金例として、以下の3つの自治体をご紹介します。
千葉県松戸市では、コロナ禍での原油価格や電気・ガス料金の高騰の影響を受けた事業者の負担軽減を目的として、「原油価格物価高騰対策支援補助金」を提供しています。介護施設等に対する燃料費及び光熱費経費に対して、1事業所あたり15万円(居宅介護支援事業所及び介護予防支援事業所は25万円)を上限に支援しています。
富山県では、燃料費や光熱水費の高騰の影響を受けている県内の介護サービス事業所や事業者を支援するために、「富山県燃料・光熱水費高騰緊急支援事業費補助金(介護分)」を実施しています。この補助金は、経営に圧迫を受けている事業者を対象に、上昇した光熱水費の一部を補助することを目的としています。これにより、介護サービス事業所や事業者は財政的なサポートを受けることができ、サービスの提供を継続することが可能になります。
東京都西東京市では、長引くエネルギー・食料品価格等の物価高騰の影響を受けて介護保険等のサービスを継続して提供している高齢者関係事業者に対し、運営経費の一部を補助する「介護保険等高齢者関係事業者支援事業」を実施しています。補助対象経費として、燃料費、電気・ガス料金、食材費が含まれており、補助金の額は事業者のサービス種別によって異なります。
出典元:http://www.jet-leisure.net/
次世代節水装置JET(ジェット)は、水の使用量を削減し、水道料金を節約するための製品です。以下はJETの概要です。
特許と技術: JETは、世界6カ国で特許を取得しており、空気混入型節水アダプターと蛇口用通水アダプターの技術を採用しています。
節水機能: この装置は、蛇口やシャワーに取り付けることで、最大50~30%の節水を可能にします。空気混入技術により、水量を減少させつつも快適な使用感を保持しています。
分析と導入実績: 日本食品分析センター、日本総合住生活株式会社、早稲田環境研究所などの第三者機関による製品分析が行われており、全国で15000以上の施設や店舗に導入されています。
利用者の満足度: JETは25万個以上の取り付け実績があり、利用者からの高い満足度を得ています。
コストと導入: 初期費用や施工費は0円で、削減された水道料金からの支払いで導入が可能です。また、装置のレンタルも同様に0円です。
メンテナンス: JETはメンテナンスフリーで、使い心地にもこだわりがあります。
他にも、自動水栓や手元一時止水機能付きシャワーヘッドなど、節水を実現するための様々な製品が市場には存在しますが、JETは特にその節水効果と使い心地のバランスが評価されている製品です。
出典元:https://bcpsalon.i-sta.co.jp/
2024年3月から実施される介護事業者向けのBCP策定義務化に伴い、事業継続計画の策定と実施をサポートする「介護事業者向けBCP相談窓口」が重要な役割を果たします。このサービスは、計画策定から実際の運用、そして必要に応じた更新まで、事業者のニーズに合わせた包括的なサポートを提供します。災害や緊急時の迅速な対応を可能にし、事業の中断を最小限に抑えることが目的です。
出典元:https://www.lixil.co.jp/lineup/faucet/s/ecoaquaspa-sp/
エコアクアシャワーSPAは、美容室などの業務用にも適しており、節水効果と快適な使用感を兼ね備えています。これにより、コスト削減と顧客満足度の向上を実現することが可能です。
出典元:https://milky-selections.com/zero_af.html
ミラブルzeroは、節水効果に加えて、顧客の体験と店舗のブランドイメージを向上させる多機能シャワーヘッドです。これにより、店舗運営者はコスト削減、顧客満足度向上、環境保護への貢献など、多角的なメリットを享受できます。
この記事では、介護施設や老人ホームにおける光熱費削減の方法と、その際の注意点、さらに自治体の補助金事例について詳しく解説しました。光熱費は介護施設の固定費の中で大きな部分を占めており、効果的な削減は経営の安定に直結します。しかし、高齢者や介護が必要な利用者の安全と快適性を犠牲にすることなく、適切に管理することが重要です。適正な光熱費削減により、利用者とスタッフの満足度を保ちながら、経済的な利益を追求しましょう。